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ル・マン/WEC ニュース

投稿日: 2018.10.14 21:12
更新日: 2018.10.14 21:58

6時間の耐久戦で勝負を決めた、可夢偉の一瞬の判断。「チームはインターと言ったけど、僕は『お願いだからスリック!』と」

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ル・マン/WEC | 6時間の耐久戦で勝負を決めた、可夢偉の一瞬の判断。「チームはインターと言ったけど、僕は『お願いだからスリック!』と」

 小林可夢偉率いるトヨタ7号車TS050が見事、母国レースの2018年WEC世界耐久選手権富士6時間レースを制した。可夢偉にとってWECのスーパーシーズンで初めての勝利。WECの勝利も2016年の富士戦以来となる2年ぶりの勝利となった。チームメイトでありライバルでもある中嶋一貴組の8号車との戦いをレース後に振り返った可夢偉。今回の勝利は、富士を知り尽くした可夢偉の経験と感覚がキーとなった。

 前日の予選でトップタイムをマークしながらも、最初にアタックしたチームメイトのホセ-マリア・ロペスのピットレーン速度違反によって、タイム抹消のペナルティとなってしまい、LMP1クラスで最後尾となる8番グリッドスタートとなった可夢偉組の7号車。ポールポジションからスタートする中嶋一貴組の8号車を抜いて優勝するために、可夢偉は策を練って実行した。

「スタートはウエットカットのタイヤで行きました。ウエットタイヤの表面にあるブロックをカットして溝を増やしたタイヤです。それを選んだのは、まずはセーフティカーが入ったらタイヤが冷えるし、路面状況としては風があまりないから、そんなに簡単には乾かないと読みました」

「最初のスティントは27周走ればいいので、スタートで最初、雨でタイヤが温まらなくてゴタゴタして抜けないよりも、(溝が多くて温まりやすいウエットカットで)最初にズバッと前に出て、そこからタイヤがタレても1周コンマ数秒落ちで走れれば、とりあえず8号車との勝負権が出てくるかなと」と、可夢偉。

 この富士戦から、TS050は性能調整“EoT(イクイバレンス・オブ・テクノロジー=技術の均衡)”によって前回より26kgのウエイトハンデを搭載することになり、さらにライバルのLMP1のマシンは燃料流量が上がり、直線スピードではTS050をしのぐ速度になった。1周のタイムではまだまだTS050が速くても、普通にドライの状態で走れば、これまで以上に抜くのに時間がかかるのは明白だった。可夢偉はドライになって勝負をするよりも、雨のスタートで混雑する機会を全力で活かせるプランを選んだのだ。

 ウエットコンディションのスタートに賭けた可夢偉はウエットタイヤをカットしたウエットカットで臨んだが、しかし、そのタイヤは失敗に終わってしまった。

「2~3周というよりも、コースに出た瞬間、コーナー3つくらいでタイヤ選択を失敗したと思いました。プライベーターたちは抜けたけど、8号車を考えたら全然、話にならないなと思って。実際は賭けでしたからね。最初に、いかにパッと8号車のところまで行けるか。実際、いつも以上にドライでは簡単には抜けなかったじゃないですか。だから、スタートでそこそこポジションを上げるのが僕ら的には重要だった。結果は失敗でしたけどね。タイヤ選択は僕が提案しましたけど、完全に大失敗でした」

 だが、1度くらいの大失敗では可夢偉は諦めなかった。失敗と言えども、3周目にはLMP1のプライベーター6台をオーバーテイクして8号車に続く2番手まで順位を上げた。可夢偉は次のチャンス、ウエットからドライに路面コンディションが変わるタイミングを狙った。そして10周目、その時点で誰も履いていなかったスリックのドライタイヤにいち早く変更する勝負に出たのだ。

2018/19年WEC第4戦富士をワン・ツー・フィニッシュで制したTOYOTA GAZOO Racing
最初のタイヤ交換で誰よりも早くドライ/スリックタイヤに変えた可夢偉の判断が勝負の鍵になった

■富士を知り尽くした可夢偉の勘と判断、2度目のチャレンジが2年ぶりの勝利を呼び込む


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