中嶋一貴と小林可夢偉。トヨタの育成ドライバーとして若き日を過ごし、F1まで上りつめた彼らは、いまWEC世界耐久選手権でチーム内ライバルの関係にある。日本人初のWEC王者という栄誉を賭け、コース上では一歩たりとも引かぬ激しい戦いを繰り広げる彼らだが、ひとたびクルマを降りれば関係は実に良好。意外にウマが合っているようにさえ見える。そこで、彼らのキャラクターと不思議な関係に迫るべく、ユルめのトークにおつき合い願った。
──おふたりが初めて会った時のことを覚えていますか?
一貴:カートの時代ですね。同じヤマハ関係のチームでやっていた頃。僕は高校2年生で、可夢偉は中学2~3年かな。可夢偉はその頃から有名人だったし、名前は知っていましたよ。
──その頃の可夢偉さんに対して、何か印象はありましたか?
一貴:う~ん、どうでしょう。こんなに「しっかりとした関西人」にはあまり会ったことがなかったなと。
可夢偉:何ですか、それ?
一貴:ジャンケンのことを、インジャンと言うレベルの関西人は、可夢偉が初めてだった。
可夢偉:つまり、バリバリっていうことやね。
一貴:もちろん、それ以前も関西人の知り合いはいたけれど、京都とか和歌山とかって、ちょっと違うじゃないですか。だから、コテコテの関西人は可夢偉が初めてだった。
可夢偉:コテコテの関西人ドライバーは少ないよ。(脇阪)寿一さんとか奈良だし。奈良って、関西の中では真ん中ではないから……こう言うと寿一さんに怒られるかもしれないけど(笑)。
──では、お互いの性格で、似ている部分はありますか?
可夢偉:ないでしょ。俺たちって似ているところ、ある?
一貴:う~ん……。
可夢偉:聞く相手間違ってますよ。片岡(龍也)くんとかに聞いてくれないと。
一貴:……まぁ、あえて言うなら、他人に干渉しない、興味がないという部分は何となく近いかもね。
可夢偉:確かにね。
一貴:それくらいじゃないですか?
──では逆に、一番違うなと思う部分は?
一貴:可夢偉は、アクティブだと思うね。だって(セブリングの)テストが終わった、その日の夜中にマイアミまで行ったんでしょ? すげぇなあと思いますよ。
可夢偉:そう、マイク(コンウェイ)とね。彼はもともと(インディカー参戦時代に)マイアミに住んでいたし。何をするかも決めずに行き、行く途中でホテルを探した。
一貴:いやぁ、アクティブだなあ。僕もどこかに行くのは好きだけど、基本的にホテルを探すのとか飛行機を予約するのとかって、嫌い。誰かがやってくれたら嬉しい。
可夢偉:僕は自分でやらないと気が済まない。昔からずっと、調べていいのを見つけるのが得意なんです。人に任せて行って「アレッ?」となるくらいだったら、自分で探した方がいい。だから、自分でやらないとイヤなんです。僕、多分ホテル(を紹介する)コンシェルジェとか、向いていると思います。いろいろな口コミや評価を見て、行ったことのない、いい店を探すのが得意なんです。
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可夢偉による「ゴルフの断り方」や「飲食業とレースの共通項」など、プレビュー本ながらあまりレースとは関係ないふたりの対談は、6月7日発売の『ル・マン24時間完全ガイド2019』内にて全文掲載しています。
合わせて今年は、参戦全62チーム(台)の、詳細情報も掲載。「じつは2時間台でマラソンを完走したことがある」「じつはあの会社の社長」などなど、隠れたドライバー情報も満載なので、テレビ観戦のお供にぜひどうぞ。
また、「ル・マン24時間は鈴鹿10時間の練習だと思っています」と言い切る、LMGTEアマクラス初参戦のCARGUY代表・木村武史氏には、レーシングドライバーの木下隆之が、その独特の視点で迫ります。そのほか、24時間を戦うためのトヨタのピット設備のディテールや、松田次生選手によるサルト・サーキット「車載映像解説」なども掲載。ル・マンに向けて気分を盛り上げるのに最適の一冊となっています。