2018/19年のWEC世界耐久選手権“スーパーシーズン”最終戦の第8戦ル・マン前、最後のレースとなった第7戦スパ6時間レース。7号車トヨタTS050ハイブリッドはトラブルにより緊急ピットイン、修復に11分以上を費やし、8号車トヨタだけでなくプライベーター勢に先行を許す形となった。
もしル・マンで同様の、あるいはもっと深刻なトラブルが襲いかかったら、もしそれがトヨタ2台ともに起きてしまったら……勝利はプライベーターの手に渡ってしまいかねない。
スパで起きたトラブルの原因については後述するが、じつは第6戦セブリングに先駆けた事前テストでも、“ヒューマンエラー”が起きていたという。
「去年ル・マンで勝ったのは、何もトラブルが起こらず、一番遠くまで走れたからであって、何かが起きていたら勝てなかったかもしれない。『自分たちはル・マンウイナーだ』などと思った瞬間、すべてが瓦解する。だから『ふざけてるのか』とみんなに言いました。『いい加減にしろ、何をいい気になっているのか』と。ただ、いくら自分が口で言っても、実際に何かが起きないと締まらない部分がある。それがレースではなく、テストで出てくれて本当に良かった」(TMG村田久武社長)
村田氏がそう語っていたのは3月のセブリングでのこと。だが、スパでは肝心のレース中にそれが起きてしまった形だ。
スパのトラブル発生時、電気系担当クルーがコクピット内の修復にあたる様子が見られ、その後リリースでは「突然のセンサートラブル」とだけ発表されていたが、東富士研究所で開発を束ねるGRパワートレーン推進部の加地雅哉部長はその後の取材において、「ブレーキ関連、つまり“準ハイブリッド”関連のトラブルです。部品は特定できています」と明かした。
TS050はブレーキング時に運動エネルギーを回生することを前提としているため、このトラブルが起きた際はレーシングスピードで走り続けるとブレーキがもたなくなる。そのため、ガレージでの修復が必要だった。
「部品の信頼性そのものはそれほど心配がなく、確実なチェックを行なえば問題は起こらない、というところまでは突き止めました。要は、アッセンブリング(組み立て)をしっかりとやる、ということです。どれだけ入念に準備を進めても、100点はありません。ただ、99.9999……と並べる9の数が、まだ足りていなかったということです。我々は30何年間も勝てず、去年たまたま1回勝てただけ。所詮、その程度のチームなんだと思って、準備を整えていきます」(加地氏)