ル・マン/WEC ニュース

投稿日: 2019.06.19 12:20
更新日: 2019.06.20 00:40

WEC:2020/21年、トヨタとアストンマーティン参戦でメーカー対決復活。サプライズは続くか


ル・マン/WEC | WEC:2020/21年、トヨタとアストンマーティン参戦でメーカー対決復活。サプライズは続くか

 ル・マン24時間レースの決勝を翌日に控えた金曜日(6月14日)、恒例のACO/FIA合同記者会見がル・マン24時間サーキットで行われ、2020/21年シーズンに現行LMP1規定に替わって導入される新規定が発表された。

『ハイパーカー』と呼ぶ新規定は2018年の記者会見ですでに概要が発表され、12月には技術規則が公開されている。今回発表された内容は一部、既発表の内容を覆している。いずれも間口を広くする方向で、より多くのマニュファクチャラー/プライベーターの参戦を呼び込もうとする意図が見え隠れする。

 例えば、義務付けだったハイブリッドシステムは搭載しなくてもよくなった。その結果、パフォーマンスにばらつきが生まれることになるが、現在LMGTE Proに適用されてうまく機能しているオートマチックBoP(性能調整)を導入し、性能の均衡化を図ることが明かされた。

また、車重は1100kg、パワートレーンの平均総合出力は550kW(750ps)、タイヤはシングルサプライヤーとするなどの各種制限を設けることで、開発競争によるコスト高騰を防ぐ考えだ。

 2018年発表時の車重は980kgだったので、だいぶ緩く(参入しやすく)なっている。車重の増加を勘案した結果だろうか、2018年の発表時のル・マンでの想定ラップタイムは3分20秒だった。今回の発表ではレースコンディションで3分30秒と発表された。

 ハイブリッドシステムの選択は自由になったが、モーターの搭載位置はフロントに限定し、最高出力を200kW(270ps)とする点に変わりはない。一方で、ハイブリッド非搭載車両が過度に不利にならないよう、モーター駆動時は4WDになるメリットを残しながら、エネルギーの放出量と放出のタイミングに制限が設けられることになった。スリックタイヤ装着時は120km/h以上でアシストが可能。ウエットタイヤ装着時は140km/hから160km/hの間で線引きが設けられることになる。

2020-21年シーズンのWEC世界耐久選手権に参戦することになったアストンマーティン・ヴァルキリー
2020-21年シーズンのWEC世界耐久選手権に参戦することになったアストンマーティン・ヴァルキリー

 ハイパーカー規定の発表を待つように、アストンマーティンは現地で記者会見を開き、ヴァルキリーをベースにした車両を「少なくとも2台」用意し、2020年9月に始まる2020/21年のハイパーカークラスに参戦すると発表した。

 ヴァルキリーはレッドブル・レーシングのチーフ・テクニカル・オフィサーを務めるエイドリアン・ニューウェイの空力に対するこだわりを形にしたハイパーカーだ。2018年12月に公開された技術規則ではディフューザーの寸法を規定していたが、アップデートされた規則(未公開)ではボディ下面の形状は“フリー”となるため、ベンチュリー効果を最大限生かしたベース車両の特徴的なデザインに手を加える必要はなくなる。

 エンジンはデチューンが必要だ。ヴァルキリーが搭載するのは、コスワースが専用開発した6.5リッターV12自然吸気エンジンで、最高出力は1000psに達する。1万1100rpmの高回転がこのエンジンのウリなのだが、どこに落としどころを見つけるのだろうか。

 ヴァルキリーはハイブリッドシステムをリヤに搭載するため、新規定に合致させるためにはフロントに移設しなければならない。この点についてアストンマーティンCOOのデイビッド・キングは、「ハイパーカー規定のハイブリッドシステムは、ウエット走行時に4WDになるのが魅力だ。搭載する価値があるかどうかを見極めて決めたい」と語った。

2020年以降のル・マン24時間に挑むTOYOTA GAZOO RacingのGRスーパースポーツのイラスト
2020年以降のル・マン24時間に挑むTOYOTA GAZOO RacingのGRスーパースポーツのイラスト

 アストンマーティンがハイパーカー規定参入を発表した直後、トヨタも“新世代ハイブリッド車両”で参戦すると発表した。プレスリリースには「市販車ベース」とあるが、WECハイパーカー規定の車両開発が先で、それを市販バージョンに落とし込むのが真実だ。

「昨年発表したGRスーパースポーツは、TS050をベースにロードゴーイングバージョンを作るとこうなるという姿を示しました」と、TOYOTA GAZOO Racing Companyの友山茂樹プレジデントは説明する。

「今回示したシルエットは、かなりレーシングバージョンに近くなっています。はっきりしてきたレギュレーションをスタディし、チューニングした車両を2020/21年のWECに投入。そこから得られたノウハウでロードゴーイングバージョンを作っていく。これまでのトヨタのクルマづくりと違って、レースフィールドにあるクルマからロードゴーイングバージョンを作ります」

 参戦マニュファクチャラーは、ハイパーカーのスタイルをしたプロトタイプを開発するか、量産ハイパーカーをベースにレース車両を開発する手法の2種類から選択できる。トヨタはプロトタイプを選択(参戦時点で量産が始まっていないこともあり)。アストンマーティンの場合、順当に考えれば後者だ。量産ベースを選択した場合、2年間で20台以上の製造が義務づけられる。

 ハイブリッドが選択制になり、空力形状はフリー。ハイパーカー風プロトタイプなら、量産の義務はない。参戦の間口を広げるこれらの規定変更が、複数のマニュファクチャラーやプライベーターをハイパーカーに振り向かせているよう。サプライズはアストンマーティンだけではなさそうだ。


ル・マン/WEC News Ranking

本日のレースクイーン

Manepa JLOC Belladonna
小川舞(おがわまい)

ル・マン/WEC Photo Ranking

フォトランキング