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ル・マン/WEC ニュース

投稿日: 2019.10.08 18:23

WEC:出力向上のため、あえて排気量ダウン。初めて明かされたトヨタTS050ハイブリッドのエンジン開発

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ル・マン/WEC | WEC:出力向上のため、あえて排気量ダウン。初めて明かされたトヨタTS050ハイブリッドのエンジン開発

 トヨタTS040ハイブリッドでの2015年ル・マン24時間レース惨敗を受けて、それまでの自然吸気3.7リッターV8エンジンを捨て、2.4リッター直噴V6ターボを開発してTS050ハイブリッドに搭載したことはこれまで公表されていたが、2017年に向けて、さらなる大幅なパワーアップを目指して、V6ターボエンジンが大幅改良されていたことが明らかになった。

 通常、レーシングエンジンでも、市販車用エンジンでも型式名が存在するものの、TS030ハイブリッド以降のWECプログラムではエンジン型式は存在しない。ハイブリッドシステムと一体として機能することを前提としているからだ。しかし、2016年から2017年のエンジンの変更は、通常であればエンジン型式が変更されるくらいの内容を伴っている。

 まず、エンジンブロックがサイズ変更されている。大きな性能向上を見込み全長を伸ばした。熱効率を重視してエンジン回転数を上げずに出力向上させるためには、燃焼効率を上げて筒内圧力を上げる必要がある。

筒内圧力を上げて出力を向上させようとすると、ピストンを押し下げる圧力も向上して、コンロッドとクランクシャフトの間に介在するベアリングへの負担が大きくなる。筒内圧力を高めつつベアリングの過度な負担を抑制するためにベアリングの幅を広くした。その結果、エンジンの全長も伸ばすこととなったのだ。

TS050ハイブリッドに搭載される2.4リットルV6ターボエンジン
TS050ハイブリッドに搭載される2.4リットルV6ターボエンジン

 その上で、排気量はあえて2.4リッターから2.1リッターへ小さくすることを選んだ。排気量を小さくすることでフリクションを減少させるとともに、高効率領域でターボを使うことで吸気排気損失を改善。これによって出力向上が可能になるとのシミュレーション結果からの選択だった。

 筒内圧力をどのように上げるのか? そのカギが『新しい燃焼コンセプト』だ。燃焼室内の構造を変更することで、より薄い混合気をより速く燃焼させることによって熱効率向上を図る。F1やスーパーGTでも話題として上るプレチャンバーと呼ばれる副燃焼室が採用されていると思われる。

 ところが、小排気量化のコンセプトは後退を余儀なくされた。排気量を小さくしたぶん、燃焼したときに発生する熱エネルギーを小さなシリンダー容積で受け止めることになり、燃焼温度が上昇しノッキングが発生しやすくなってしまったという。

 排気量2.1リッターのまま開発を継続するか、2.4リッターに戻すか、2017年の実走テスト日程の鑑みながらぎりぎりの選択を迫られて、最終的には2.4リッターに戻したという。

 こうした時間との戦いを繰り広げた開発の結果、2016年から2017年規定が変更されて燃料流量が80.6kg/hから80.2kg/hへ減らされているにも関わらず、TS050ハイブリッドのエンジンは全回転域でトルクアップを果たし、その性能向上幅はNA3.7リッターV8から、直噴V6ターボへスイッチした2015~16年の向上幅を上回った。

 現在発売中の『TS050ハイブリッドのすべて』は、こうした知られざるトヨタ東富士研究所におけるエンジン開発の舞台裏、ハイブリッドシステム開発、“ベンチ・適合”、さらにはTMG(トヨタ・モータースポーツGmbH)における車体開発まで、究極のル・マン・ランナーの裏側に迫りました。

2017年型トヨタTS050ハイブリッド
2017年型トヨタTS050ハイブリッド


10月4日発売『TOYOTA TS050 HYBRIDのすべて』
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