1923年に第1回が開催されたル・マン24時間レースは、2020年で88回目を数える。
本来、この6月に予定されていたレースは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により9月へと延期になってしまった。耐久ファンにとっては寂しい6月となってしまうが、6月5日(金)発売の『オートスポーツ No.1531』は「完全保存版 ル・マン24時間 名車とテクノロジーの50年史 and more.」と題して、伝統の一戦を彩ってきた名車の数々を一冊にまとめている。ここではオートスポーツ編集部が、その内容を紹介する。
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第一回のフランスGP開催の地ともなったル・マンは「進取の気風」がある街で、ル・マン24時間レースは当初から「近未来の市販自動車の技術を試し、競い合うことで高め合う場にする」という精神を持って始まった。
そのため、市販車あるいは市販車の試作車(プロトタイプ)によって競われることとなり、これは現在まで一貫したこのレースの特徴となっている。
また、異なる成り立ちをもつマシンを一堂に競わせるため、かつての「性能指数賞」やグループC時代における燃費規制、ハイブリッド時代に入ってからのエネルギー量による性能調整など、徹底して「効率がいいこと」を讃える姿勢も、ル・マンには貫かれている。
もちろん時代とともにその規則は移り変わり、多くのメーカーで賑わっていた時代もあれば、トップカテゴリーが「ワークス不在」となった年もあった。
車両規定も数々の変遷をたどってきた。マシンは屋根付きになったり、オープンタイプになったりを繰り返してきたし、参戦台数が少なくなるとアメリカ勢にも門戸を開いてエントリー数を確保するなど、興行としての魅力を保つための絶妙な駆け引きや調整も常に行なわれてきた。
ルールの意図やメーカーの参戦姿勢、主催者側の思惑などが常に絡み合いながらの紆余曲折はル・マンの歴史そのものであり、それぞれの時代を戦ったマシンにもその「歴史」が深く反映されている。
ハイパーカー(LMH)規則の採用、そしてアメリカ・IMSAのLMDhとの相互乗り入れを発表し、何度目かのターニングポイントを迎えつつあるいまだからこそ、これまでル・マンで戦ってきたマシンたちを振り返ることで見えてくるものがあるのではないか……というのが本特集の企図である。