レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る

ル・マン/WEC ニュース

投稿日: 2020.10.14 12:35
更新日: 2020.10.14 12:56

ル・マン24時間の歴史の一部になったトヨタ/スペイン人ライターのモータースポーツ便り

レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る


ル・マン/WEC | ル・マン24時間の歴史の一部になったトヨタ/スペイン人ライターのモータースポーツ便り

 9月17~20日に、フランスのル・マンで行なわれた2019/2020年WEC世界耐久選手権第7戦ル・マン24時間レースは、8号車トヨタTS050ハイブリッドのセバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドン・ハートレー組が総合優勝を果たした。トヨタの優勝は“ライバル不在”の結果という意見もあるが、スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアは異を唱えている。

—————————————–
 2020年のル・マン24時間レースが終わり、トヨタはこれでル・マン24時間の3度の勝者となった。この3年でTS050ハイブリッドは、長年ドライバーを務める中嶋一貴とセバスチャン・ブエミ、またフェルナンド・アロンソ(2018~2019年)とブレンドン・ハートレー(2020年)とともに、歴史的なマシンとなった。数年前の最大の困難をくぐり抜け、トヨタは過去3シーズンですべてを勝ち取ってきたのだ。私はトヨタが達成してきたことに感銘を受けずにはいられない。彼らはル・マン24時間の歴史の一部になったのだ。

 多くの人々はトヨタのル・マン優勝を“価値が低い”と言うかもしれない。なぜならファクトリーのライバルがいないからだ。戦う相手となるポルシェやアウディがいないのは事実である一方で、トヨタはレギュレーション自体と戦ってきた。

 ワークスプログラムであるため、TS050はレベリオン・レーシング、バイコレス、ジネッタのマシンよりはるかに速いことは明らかだ。しかしFIAとACO(フランス西部自動車クラブ、ル・マン24時間主催者)はレギュレーションによって接戦を促進しようと最善を尽くしてきている。つまり、プライベーターやノンハイブリッドのLMP1マシンが競争できるように、基本的にトヨタのパフォーマンスは落とされているのだ。

 私はこうなることになった判断を理解できる。なぜなら競争がまったくなく、ひとつのマニュファクチャラーのみがレースを支配することは、レーシングシリーズにとって良くないことだからだ。しかしそれと同時に、私はこれではトヨタにとってあまりにも不公平だといつも感じていた。

 適当な時期にドイツのマニュファクチャラーがWECから撤退した一方で、トヨタは現在の形式のチャンピオンシップのサポートを唯一継続した。2021年にはル・マン・ハイパーカー規定が導入されるが、シリーズをサポートすることに対しての“報酬”は、パフォーマンスを削られることだった。結局トヨタがル・マンで勝ったら、人々は「もちろん彼らは勝つさ!」と言うし、ル・マンで負ければメディアとファンはそれを失敗と見なすだろう。

 しかし実際には、このようの状況でレースをするのは非常に複雑なことでもあると私は考えている。トヨタは新しい状況に適応するために姿勢を変え、状況を最大限に活用することが求められた。トヨタは3年連続で勝利を収めた。そのため、多くの人々がハイブリッドとノンハイブリッドの間に競争を生み出すためのEoT(テクノロジーの均衡。実質の性能調整)が不十分だったことを、この結果が示していると考えている。多くの点で、今日のWECでは「トヨタは負ける必要がある」という考え方がされているのだ。トヨタがル・マンであれほどの情熱を傾けて戦っているのに、このような扱われ方をされているのは悲しいことだと思った。

 幸い、彼らの2018年、2019年、2020年のパフォーマンスは素晴らしかった。この3年間で、彼らはまったく異なる3回のレースと挑戦に取り組んだようなものだ。最初の優勝では、チーム内のバトルと技術トラブルがあった。2016年と2017年に、トヨタはライバルたちに負けたわけではない。彼らはル・マン自体に敗れたのだ。目的はレースに勝つことだったので、いろいろな意味で誰がライバルだろうが関係なかった。最も重要なのはレースに負けないことだったのだ。トヨタが優勝して嬉しかったが、それは彼らの献身が公平に報われたからだ。レベリオン・レーシングが2020年にル・マンで優勝し、その後WECから撤退することを想像できるだろうか?

■次のページへ:2016年におこったトヨタ8号車の悲劇


関連のニュース