ミシュランは、新しいフォーミュラのWEC世界耐久選手権でのデビューが近づくル・マン・ハイパーカータイヤの開発進捗レベルに満足しており、トヨタが今季使用する四輪駆動用タイヤにおいては「第1段階を終えた」としている。
ミシュランのグローバル・モータースポーツ・ディレクターであるマシュー・ボナルデルはSportscar365に対し、2021年シーズンに向けたタイトなテストウインドウのなかで冬を迎えたLMHル・マン・ハイパーカー公式サプライヤーのタイヤ開発は“オンタイム”であると語った。
なお既報のとおりWECのスケジュールは2度にわたって変更された。これにともないミシュランは当初、3月のセブリングからタイヤの供給を開始する予定だったが、現在は開幕戦が5月1日のスパ・フランコルシャンに延期されている。
TOYOTA GAZOO Racingは昨年10月以降、先週のポール・リカールでの24時間耐久テストを含め、トヨタGR010ハイブリッドで4回のテストを実施してきた。
これらのテストによってミシュランは四輪駆動タイヤ“ファミリー”の実際の測定値を取得することができた。その一方、ボナルデルはスクーデリア・キャメロン・グリッケンハウス(SCG/グリッケンハウス・レーシング)が使用する後輪駆動用については「まだやるべきことがたくさんある」と説明した。
「この冬は、すべての制限を超え、短い開発期間とクルマの不足などいくつかの困難な状況にあったにもかかわらず、私たちは合理的に期待どおりの結果を得ることができた」とボナルデル。
「私たちが満足できた要因のひとつに、利用できた唯一のハイパーカーであるトヨタGR010ハイブリッドの性能と信頼性が高かったことが挙げられる。おかげでタイヤ開発にも時間を割くことができた」
「我々はショートスティントとロングスティントの両方を実施した。アラゴンでは雪の影響でセッションの1回を延期する必要があったが、スノータイヤを開発する必要性は感じていないよ」
「残りのテストはすべてミディアム・レンジの代表的なコースで、穏やかな良いコンディションのなかで行われた。開発に関しては、プログラムは予定どおりに進んでいる」
ミシュランは、四輪駆動用のソフト、ミディアム、ハードのスリックコンパウンドのテストを幅広く実施した。ボナルデルは、ウエットタイヤについても充分なデータを集めており、走行データが不足しているにもかかわらずダンプウェザーでの性能を推測することができると述べている。
彼は、ミシュランが昨年10月にポール・リカールで行われたトヨタの初回テストの後、前後のタイヤバランスに若干の変更を加えたと説明した。これはLMHがLMDhに合わせるために70kg軽量化されたため、最適なバランスにしたものだという。
「最初の生産では、必ずしも最新の重量バランスを目標にしていたわけではなかった」とボナルデルは語った。
「もちろん、わずかに異なる重量配分のできているクルマと比べると、(以前のものは)バランスが少しオーバーステア気味になり、リヤとフロントのコンパウンドをテストするときにそれを修正する必要があった。
「シミュレーションは正しかったが、レギュレーション変更でクルマがが少し変わったため、リヤの安定性を向上させる必要があった。現在はリヤの安定性が良好なレベルにあり、次のレンジでそれを改善する余地があると考えている」
「LMH四輪駆動のフェーズ1は完了した。だが、後輪駆動向けのタイヤではまだできることがたくさんある」