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ル・マン/WEC ニュース

投稿日: 2021.07.12 12:12
更新日: 2021.07.13 12:03

プジョー&フェラーリがル・マン復帰。北米進出も叶うハイパーカー【スポーツカー新規定おさらいLMH編】

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ル・マン/WEC | プジョー&フェラーリがル・マン復帰。北米進出も叶うハイパーカー【スポーツカー新規定おさらいLMH編】

 ル・マン24時間レースを主催するACOフランス西部自動車クラブとウェザーテック・スポーツカー選手権を運営するIMSAの合意、さらにFIAによって車両規則の変更が承認されたことで、ル・マン・ハイパーカー(LMH)規定のマシンとル・マン・デイトナh(LMDh)車の最終的な“コンバージェンス(収束、収斂の意)”が実現。WEC世界耐久選手権へのLMDh参戦に続き、2023年の北米シリーズにLMH車両が出場できることになった

 LMHとLMDh、このふたつの規則は、次世代スポーツカー・プラットフォームという点では同じだが、そのなりたちと性質はそれぞれ異なる。その一方、部分的には共通化が図られ、将来の相互参戦に向けて足並みをそろえる格好となっている。

 本稿ではそんなLMH規定とLMDh規定について、いま一度情報を整理。今後予定される参戦車両の登場や自動車メーカーのプログラム発表を前に、スポーツカーレースが置かれている状況を把握するのに役立てて貰えれば幸いだ。この前編では現在、トヨタとグリッケンハウスが参加しているLMHを紹介する。

* * * * * * *

 すでに今シーズンから正式に採用されているル・マン・ハイパーカー(LMH)は、WECの新しい最高峰カテゴリーである“ハイパーカークラス”のために作られた規則であり、その策定にはシリーズを共催するFIA国際自動車連盟とACO、さらにトヨタやアストンマーティンなどの自動車メーカーが関わってきた。

 2018年のル・マンで初めて発表された新規定は当初、市販ハイパーカーをベースにレースカーを製作することが想定されていたが、その後、コスト削減や車両製作時の技術的なハードルを下げるため、ベース車を必要としない専用開発のプロトタイプカーの使用も認められることになった。

 この変更は自動車メーカーに対して門戸を広げることにつながり初年度にはトヨタだけでなく、アメリカのスポーツカーメーカーであるスクーデリア・キャメロン・グリッケンハウスをシリーズに呼び込むことに成功した。さらに、2022年シーズンに向けて先日『9X8』を発表したプジョー、翌23年にはフェラーリ×AFコルセがLMHでこのカテゴリーに参加することを表明済みだ。

 なお、今季のWECハイパーカークラスを戦っている『トヨタGR010ハイブリッド』と『グリッケンハウス007 LMH』は、いずれもこのプロトタイプ型を採用。『プジョー9X8』を披露したフランスのメーカーも同様のかたちをとった。その一方、2019年に参戦を発表するも後にこれを撤回したアストンマーティンは、市販ハイパーカー『ヴァルキリー』をベースにレースカーを仕立てるとアナウンスしていた。

 なお今シーズン、トヨタとグリッケンハウスとともにハイパーカークラスに参戦しているアルピーヌは、2021年シーズンに限り特別に許可された旧規定のノンハイブリッドLMP1マシンを使用している。

■各プロトタイプ規定のスペック比較

LMP1-H LMH LMDh
全長 4650mm 5000mm 5100mm
全幅 1900mm 2000mm 2000mm
ホイールベース 3150mm 3150mm
最低前面投影面積 1.6㎡
車両最低重量 878kg 1030kg 1030kg
エンジン最低重量 165kg
エンジン形式 4ストローク
ガソリン
システム最大出力 735kW 500kW 500kW
エンジン出力 368kW 300kW 470kW
モーター出力 300kW 200kW 50kW
モーター回生 200kW 200kW
モーター搭載位置 フロント リヤ
備考 ・4輪力行可
・燃料タンク:62.3L
・前輪力行のみ
ドライ:120km/h~
ウエット:140km/h~
ピットレーン
・燃料タンク:90L
・後輪駆動
・共通ハイブリッド
・共通ギアボックス
・コストバジェット方式

※LMP1-Hの数値はトヨタTS050ハイブリッドを参考にしたもの

ハイパーカーといえど、トヨタGR010ハイブリッドはレース専用のプロトタイプとして製作されている
ハイパーカーといえど、トヨタGR010ハイブリッドはレース専用のプロトタイプとして製作されている
アルピーヌは、今季に限り特別に出場が許されているノンハイブリッドLMP1マシン(オレカ製)を使用し、ハイパーカークラスを戦っている
アルピーヌは、今季に限り特別に出場が許されているノンハイブリッドLMP1マシン(オレカ製)を使用し、ハイパーカークラスを戦っている

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