FIA、ACOフランス西部自動車クラブ、IMSAの間におけるコンバージェンス(収束、収斂)の成果の一環として、2021年からWEC世界耐久選手権の最高峰カテゴリーの車両規則となったル・マン・ハイパーカー(LMH)に基づくマシンが、北米で開催されているIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のレースに2023年から参戦できることとなった。
2022年よりLMH車両でWECに参戦するプジョーは先日、9X8ハイパーカーでIMSAに参戦する場合は北米に展開するステランティス・グループ内の他ブランドからとしたい考えを明らかにしているが、現在LMHでWECに参戦するトヨタ、グリッケンハウス、そして2023年から登場する予定のフェラーリは、北米進出についてどう考えているのだろうか。
今季よりハイブリッドシステム搭載の新型LMH『GR010ハイブリッド』をWECに投入しているトヨタGAZOO Racingでテクニカル・ディレクターを務めるパスカル・バセロンによれば、同チームはGR010ハイブリッドをIMSAに参戦させることを「当然、検討する」としながらも、引き続きWECにフォーカスしていくことを強調している。
TGR-E(トヨタ・ガズー・レーシング・ヨーロッパ。旧TMG)副社長も務めるバセロンは、今回のコンバージェンスの成果によるLMH車両のIMSAでの適格性について「朗報である」と語っている。バセロンは競技団体や他のマニュファクチャラーと協力し、LMH車両と(次期IMSA最高峰規定である)LMDh車両が競争するための妥協点を見出す作業にあたってきた。
「3年前から我々はレギュレーションに関する作業にあたってきたので、これは朗報だ」とバセロンはSportscar365に対し語っている。
「目標は、このコンバージェンスを達成することだった」
今回のコンバージェンスがトヨタに対し、IMSAへの参戦に関する“青信号”となるかどうかと尋ねられたバセロンは、次のように述べている。
「たしかに、デイトナ、プチ・ル・マン(など)でのレースは可能であり、我々は当然、それを検討する。もちろん予算が必要になるので、我々はそれを評価しているところだ」
「現在のところ、我々の計画は引き続きWECに集中することだ。いま、アメリカでもレースができることは(規則上は)明白になった。あとはただ、計画を立てるだけでよい」
TRD-USAのプレジデント兼ゼネラル・マネジャーのデイビッド・ウィルソンによると、もしトヨタが(IMSAの長距離耐久レースで構成される)ミシュラン・エンデュランス・カップのいくつかのレースに参戦する場合、トヨタのアメリカでのモータースポーツ活動を担うTRD-USAが、それらの活動をサポートする立場にあるという。
「私は、彼らがそのクルマ(GR010ハイブリッド)をアメリカに持ち込みたいと考えていることを、知っている」とウィルソンはSportscar365に対し語っている。
「自動車マニュファクチャラーとして、耐久レースの“トリプルクラウン”に出場する機会は、グローバルな自動車レースにとって、非常に特別で素晴らしいものだ」
「そこには多くの疑問がある。彼らがそのクルマをデイトナとセブリングに持ってきた場合、アクティベーションとエンゲージメントという点において、どのように我々は参加できるのだろうか?」
「彼らは“トヨタ”であり、我々もまた同じだ」
プジョーは9X8ハイパーカーをIMSAに持ち込む場合、ステランティスが北米市場で展開しているブランドとする方針だが、TRD-USAのウィルソンによればGR010ハイブリッドのブランドを変更する予定はないという。
「実際のレースという観点からは、そのコピーを作成したり、レクサスにブランドを変更する予定はない」とウィルソン。
「それはまさに、彼らのプログラムである」
「もし、我々(レクサス)がプロトタイプレーシングの舞台へ向かう適切なタイミングが来たとしたら、LMDhカーを使用することになるだろう」