8月1日、トタルエナジーズ・スパ24時間レースの決勝レースが“スパウェザー”のなかでフィニッシュを迎え、アイアン・リンクスの51号車フェラーリ488 GT3 Evo(コム・レドガー/ニクラス・ニールセン/アレッサンドロ・ピエール・グイディ組)が、スパ・フランコルシャン伝統のレースで総合優勝を飾った。
ル・マン24時間とデイトナ24時間と並んで“世界三大耐久レース”を構成するベルギーのスパ24時間。その決勝レースは7月31日(土)16時30分にスタートが切られ、58台のマシンが長丁場の戦いに挑んでいった。
スタートから22分後に発生した多重クラッシュとそれにともなう長時間のFCYフルコースイエロー、そしてリスタート後に豪雨に襲われたレース序盤戦から中盤にかけてアクシデントが相次いだこのレースで、13番手スタートとなった51号車フェラーリは早くから上位に進出。
クラッシュで僚友71号車を失ったアイアン・リンクスの1台は5時間目に総合首位に立つと、オレンジ1・FFFレーシングチームの63号車ランボルギーニ・ウラカンGT3 Evoや、アウディスポーツ・チームWRTの32号車アウディR8 LMSとポジションを入れ替えながら中盤を迎え、レース折り返しをトップで通過した。
その後イタリアメーカーを代表するチームは10時間以上にわたってトップを守り続けるが、その背後には32号車アウディが徐々に近づき、残り6時間を切った頃にはその差が5秒以内に。以降、この2台のクルマはときに接戦を繰り広げながらレースを進めるが、アウディ陣営としては決め手に欠ける状況が続く。
それを打開するきっかけとなったのが23時間目にサーキットを襲った“スパウェザー”だ。トップを走る51号車フェラーリがレース開始から23時間と3分後に通常どおりの戦略で最後のピットストップを行ったのに対し、チームWRTはこの翌周、ドライ路面のコースにレインタイヤを装着した32号車アウディを送り出すギャンブルに打って出る。
この戦略は地元ベルギーに拠点を置くチームが直後の降雨を予想して行ったものだが、果たしてその予測は的中し、アウディのアウトラップ中に土砂降りの雨がトラックを濡らしていく。これに対して首位のアイアン・リンクスはステイアウトを選択。これが劇的なドラマの幕開けとなった。
ドライタイヤを履く51号車はピエール・グイディのドライブでなんとかコースを外れずに回ってきたが、もはやスリックタイヤで走れるコンディションではなく、たまらずピットへ飛び込む。この直後ドリス・ファントール駆る32号車アウディがコントロールラインを通過し、残り45分の段階で上位2台の順位が入れ替わった。
時を同じくして最終バスストップシケインでは多数のマシンが雨で濡れた路面でコントロールを失い、この中の複数台がクラッシュするアクシデントが発生。また、ケメル・ストレートでもウォールにヒットした車両があったためFCYが導入される。
この時点で、逆転に成功した32号車アウディと2番手に後退した52号車フェラーリのギャップは58秒。しかし、毎度のFCY導入時と同じようにリスタートに向け規制がセーフティカー(SC)ランへと移行し、隊列が整理されると2台の差は4.8秒に縮まった。