レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る

ル・マン/WEC ニュース

投稿日: 2022.07.01 17:45
更新日: 2022.07.01 18:23

ハイブリッド化とLMHの参加で複雑化するBoP。IMSAが取り組むプロセスの活性化と新ツールの導入

レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る


ル・マン/WEC | ハイブリッド化とLMHの参加で複雑化するBoP。IMSAが取り組むプロセスの活性化と新ツールの導入

 IMSAのテクニカルディレクターを務めるマット・クルドックは、ウェザーテック・スポーツカー選手権を運営する同団体が、LMHル・マン・ハイパーカーとLMDhプラットフォームのクルマを近いレベルで戦わせるために、BoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)プロセスの活性化と新しいツールの導入に取り組んでいると語った。

 今季限りで終了するDPiクラス入れ替わるかたちで、2023年に新設されるウェザーテック・スポーツカー選手権のGTPクラスは、LMDhと2021年からWEC世界耐久選手権のトップカテゴリーで採用されているLMHの両方の規定にオープンであるが、最初のシーズンはLMDhのルールに沿って制作された車両のみが登場する予定であり、現在までにアキュラ、BMW、キャデラック、ポルシェが新型マシンでの参戦を表明している。

 IMSAの技術委員会のトップを務めるクルドックは、「いま我々はGTPクラスに用いられるBoPのフィロソフィー(哲学)に多くの時間とエネルギーを費やしているところだ」とSportscar365に語った。

「LMDhでも、ドライブシャフトのトルクに基づいてパワーレベルを割り当てることが原則となる。そこでエアリストリクターやブーストレベルといったエンジンへの入力を割り当てる代わりに出力を割り当てているんだ」

「このツールは、今後大きなアドバンテージになると考えている。たとえ、すべてのマシンを同じ質量、同じパワー、同じダウンフォース、同じドラッグに設定したとしても、すべてのサーキットですべてのマシンから同じ結果が得られるわけではない」

「サーキットでのクルマのパフォーマンスには、さまざまなニュアンスがある。コントロールされた入力もあれば、反対にコントロールされていない入力もあるんだ」

「残念ながら、BoPテーブルでは対応できることがかなり限られている」

「LMHという異なるプラットフォームのクルマを加えることを考えると、これまで開発してきたBoPのプロセスに新たな課題を追加することになると思う」

「そこで我々はIMSAのBoPツールボックスに新しいツールを開発し、導入しようとしている。これによりLMHとLMDhのマシンを可能な限り近づかせるような調整を行い、それが維持できるようになる」

「ただし、とくにハイブリッドカーや全輪駆動車が登場することを考えると……。それは、これまで我々が対処する必要のなかった複雑な層だ」

カタロニア・サーキットでテストを行うポルシェ963
カタロニア・サーキットでテストを行うポルシェ963

 これまでのところ、LMHメーカーによるウェザーテック・スポーツカー選手権でのプログラムは確定してない。しかしクルドックは、LMHの製造業者がIMSAへのコミットを決定した場合とその時点で、適切な基礎が築かれるように前もって進めていると述べた。

「そうする必要がある」と語った同氏は、「BoPプロセスとホモロゲーション・プロセスを織り交ぜる必要がある」と続けた。

「IMSAで見られるすべてのプラットフォームは、ウインドシアの風洞評価を受けなければならず、それが直接シミュレーションプロセスやBoPをどのように開始するかに反映される」

「この新しいプラットフォームにはトルクセンサーが搭載されているため、DPiやGTDマシンのようにダイノでの測定を経る必要はなく、スタート時のパワーレベルを簡単に設定することができる」

 クルドックは、データ共有に関するACOフランス西部自動車クラブとの協力関係も、新しいプロセスを通じて役立つと語った。

「我々はACOのパートナーとして協力しFIA国際自動車連盟と、LMHとLMDhのBoPについて話し、これに関するメモを共有して最初のレースでできる限り近づけるようにBoPプロセスを活性化させようとしている」

■今夏のグループテストではデータを集めない

 クルドックによると、IMSAのテクニカルチームは、この夏に行われるLMDhのグループテストに参加する予定だが、あくまでサポート的な役割に徹しBoPプロセスのためのデータ収集は行わないという。

 IMSAの責務には、ハイブリッドシステム、ミシュランタイヤ、燃料供給などのコンポーネントをチームやメーカーに平等に提供することも含まれている。

「IMSAが初期のテストで担っているのは、まさにそのような役割だ」とクルドックは語った。

「我々の役割は単にマシンを走らせ(る環境を提供し)、どこに問題があるのかを学び、(チームやメーカーが)適切な解決策を講じるのを支援することだ」

「マシンの性能データを収集する機会は今後もあるはずで、いまの段階ではまだ早い」

「クルマが完全にホモロゲーションされ、検証プロセスを経て、レーストラックで評価できるようになれば、間違いなくそうなるだろう。もちろん、ロア(デイトナ24時間を前に行われる公式テスト/ロア・ビフォア・ロレックス24)は我々にとって、パフォーマンスの予測やシミュレーションモデルの相関性を確認するためのもうひとつの機会となる」

「現在の焦点は、まだマシンを正しい方向に持っていくことだと理解している。そのポイントを過ぎると、最初のBoPがデイトナで競争力のあるレースをするためのパフォーマンスバランスであることを確認することに、より焦点を当て始めるだろう」


この記事は国内独占契約により 提供の情報をもとに作成しています

関連のニュース