2021年をもって長年活躍したMotoGPを引退し、今シーズンから四輪レースのキャリアをスタートさせたバレンティーノ・ロッシ。お馴染みのゼッケンナンバーである“46”を掲げるアウディR8 LMSエボIIを駆り、ベルギーのチームWRTからファナテック・GTワールドチャレンジ(GTWC)ヨーロッパのエンデュランスカップとスプリントカップの両シリーズに参戦している“レジェンド”がドイツ、ホッケンハイムで開催された今季第8戦の定例記者会計において、今後の活動についての構想を語った。
現在ロッシが所属しているWRTは、2022年シーズンの終了をもって長らく提携してきたアウディと袂を分かち、新たにBMWとパートナーシップを結んで2024年から同社のLMDhカー『BMW Mハイブリッド V8』でWEC世界耐久選手権に参戦することは既報のとおりだ。
一方、ベルギーのチームがGT3プログラムもBMWへ全面的に移行するのかは、現時点では明らかにされていない。しかし内部関係者によると、WRTはすでに6台のBMW M4 GT3の新車をオーダーし、9月9日にはそのうちの1台がデリバリーされる予定だという。
また、9月30日~10月2日にバルセロナで開催されるGTWCヨーロッパ最終戦の後に、WRTがM4 GT3のテストを行う予定で、BMWのワークスドライバー以外の複数の有名ドライバーの名も参加者に挙がっているとの情報を得た。さらに、ロッシもこの日初めてBMWのステアリングを握る予定とのうわさも入っている。
9月最初の週末に行われたホッケンハイム戦の記者会見で、「WRTからは来季のGTプログラムに関して、正式にBMWと契約を締結していないと言われている」と語ったロッシは来季もWRTに留まるが、どのメーカーのマシンで参戦するかは現時点ではわからないとした。ただし、関係者から聴取した限りではWRTがLMDhプログラム同様に、GTもBMWへスイッチするのは間違いないだろう。
ロッシはMotoGPを戦っていた当時からBMWのZ4 GT3でレースに参戦することを強く希望しており、実は過去に2度BMWとロッシのマネジメント側との話し合いが持たれていた。
当時のBMWではZ4 GT3でカスタマーレーシングを稼働したばかりで、非常に小規模な体制で行われていたこともあり、キャパシティオーバーのためにロッシの申し出を苦渋の決断で辞退した過去がある。しかし、現在のBMWは数年前にM2 CSカップ、M4 GT4、M4 GT3の全カスタマーレーシングをM GmbHの管轄へと完全移行し、ワークス活動と分離したことでキャパシティが増えた。長年BMWでレースをすることを望んでいたロッシにとっては来年、ようやく希望が叶うことになるかもしれない。