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ル・マン/WEC ニュース

投稿日: 2022.09.10 12:31
更新日: 2022.09.10 12:34

ハイパーカーの今後、来季のカレンダーは。ACO会長とWECのCEOが日本メディアの取材に応える

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ル・マン/WEC | ハイパーカーの今後、来季のカレンダーは。ACO会長とWECのCEOが日本メディアの取材に応える

 9月10日、WEC世界耐久選手権第5戦富士6時間が開催されている富士スピードウェイで、ル・マン24時間を運営するACOフランス西部自動車クラブのピエール・フィヨン会長と、ACO、FIA国際自動車連盟とともにWECを運営するLMEMのフレデリック・ルキアンCEOが、日本のメディアに対してのグループインタビューに応じ、WEC、ル・マン24時間の将来について語った。

 このインタビューは、ACO、WECからの打診で実現したもので、これまで長年開催されてきたWEC富士ではなかったことだ。リラックスした様子で登場したふたりは、日本のメディアからの質問に答え、興味深いWECの今後について語っている。

* * * * *

■LMHとLMDhは『ハイパーカー』という呼称へ

──3年ぶりに日本でのWEC開催となります。ルキアンさんは初めての日本でのWEC開催だと思いますが、感想を教えてください。
ピエール・フィヨン(以下PF):
私は日本に来るのが大好きだからね。3年も来られず寂しい思いをしていた。こうして戻ってこられてうれしく思うよ。

フレデリック・ルキアン(以下FL):日本に戻ってくるのは本当に大変だった。いま世界中の移動がまだ大変な状況にあり、特にロジスティクスには困難がともなう。しかしそんな困難を乗りこえて戻ってくることができた。我々にとっても大切なことだが、参戦するコンペティター、メディアにとっても重要なことだと思う。

──ハイパーカーの時代を迎え、これからLMDhも入りシリーズも盛況となりそうだが、将来へ向けた期待を教えてください。
PF:
まず、未来はこれから大いに開けていると思っている。また大事なところだが、もう『LMDh』という呼び方はしないつもりだ。すべてが『ハイパーカー』となる。我々としては分かりにくいカテゴリー分けはせず、『ハイパーカー』とだけ言うことにする。参戦するメーカーがすべてシャシーから作り、LMHとして走るのか、シャシーを購入してLMDhで走るのかはメーカーが決めることだが、我々としては『ハイパーカー』として定める。これについてはFIA、ACO、またSROとも話をして、こういう形で決定した。

 ハイパーカーはメーカーから高い評価を得ており、現在参戦しているトヨタ、プジョー、さらにこれから先に参戦を発表したポルシェ、BMW、フェラーリ、キャデラック、アルピーヌ、ランボルギーニが加わる。

WEC第5戦富士で日本のメディアの取材に応えたピエール・フィヨンACO会長
WEC第5戦富士で日本のメディアの取材に応えたピエール・フィヨンACO会長

■2023年のル・マン100周年は大々的に催しを開催

──来年はル・マン24時間が100周年を迎えるが、どういったとらえ方をしているのか。またACOは水素についての取り組みも進めているが、100周年で特別なことはあるか。
PF:
これまで1年以上、100周年記念についてFIAとともに準備を進めている。100周年を迎えるレースは世界でもまれで、大きなイベントをやりたいと思っているんだ。今から2週間前になるが、ペブルビーチで100周年記念トロフィーを公開した。このトロフィーは1回限りのトロフィーで、フランス造幣局で作られたものだ。勝者がそれをキープできる。ウイナーはレースを転戦し、それを披露することができ、最終的にル・マンで授与される。このトロフィーは来週はグッドウッドに行く予定で、その後も世界各地をまわる。

 さらに100周年に向けては、パリで大きなイベントを行い、来年5月には100周年記念の映画のビジュアルを公開する。また記念の本も準備していて、間もなく出版される予定だ。ル・マンでは100周年記念の催しを行う予定だが、この催しはル・マン・クラシックまで3週間に渡って行われる。また歴史を語るだけではなく、これまで100年に渡り、ル・マン24時間を支えてくれた人たちに対するお礼をできるようなイベントも開催したいと思う。

 またこれまでこういったことは無かったことだが、ル・マン24時間の優勝車を80台集めて、展示したいと思っている。これはル・マン・クラシックまで3週間展示するつもりだ。

 残念ながら100周年記念トロフィーは今回の富士に持ってくることができなかったが、何かトロフィーを日本の皆さんにお目にかけるイベントも考えている。

FL:WECでも100周年記念トロフィーを展示しようと思っている。バーレーンで発表する予定だ。2023年のWECのプログラムがスタートしたら、それぞれのイベントでトロフィーを展示する。WECはまだル・マン24時間に比べたら若いが(笑)、今年は10周年を迎えることができた。

PF:水素については、H24というクルマをご存知だと思う。このクルマで水素のプロモーションをしようとル・マン・カップに参戦している。また、トヨタも水素へ取り組んでいるが、ファンゾーンではトヨタとともに水素についての展示も行っている。

 我々としては、ル・マンもWECもゼロ・エミッションのレースを目指している。今年はすでにトタルエナジーズとともに新しい燃料を開発し、二酸化炭素排出量が70%少ない、100%再生可能な燃料を使っている。2025〜26年くらいになると思うが、その頃にはル・マン24時間にも水素を使った車両を参戦させるつもりだ。

100周年大会を迎える2023年ル・マン24時間レースの特別トロフィー
100周年大会を迎える2023年ル・マン24時間レースの特別トロフィー
100周年大会を迎える2023年ル・マン24時間レースの特別トロフィー

■2023年カレンダー発表は間もなく。「来年も日本に戻ってくる」

──IMSAウェザーテック・スポーツカーチャンピオンシップとWECのテクニカルレギュレーションが統一されたが、今後IMSAとWECでスポーティングレギュレーションも統一されていくのか。
PF:
大事なことは技術規定を統一し、すべてのクルマがそれぞれのシリーズを走ることができることにある。スポーティングレギュレーションについては、それぞれのシリーズがそれぞれのものを使う。またレースコントロールやディレクションもそれぞれだ。

 やはり地域によってやり方は異なる。そこまで統一は考えていない。

──2023年のWECカレンダーについての進捗は。またル・マン24時間含め、エントリー台数はどの程度になりそうか。
FL:
カレンダーについては、もう完成している。ただFIAの承認を得なければならないので、その時間がかかっている状況だ。おそらく1週間〜10日くらいで発表できると思う。本来であれば今回発表したかったが、そういった事情があるんだ。

 具体的には、おそらくヨーロッパでのレースがあと1戦くらいは増えるということはお話しできる。そしてもちろん日本には戻ってくる。申し訳ないが、日にちについてはしばらく待って欲しい。

 参戦台数については、WECは36台程度を見込んでいる。さまざまな事情があって36台に制限しているが、参戦申込はそれよりもずっとたくさんある。

PF:ル・マン24時間は62台だよ(笑)。(編注:ル・マン24時間は上限が定まっている)

7号車トヨタGR010ハイブリッド(手前:TOYOTA GAZOO Racing)と93号車プジョー9X8(プジョー・トタルエナジーズ) 2022年WEC第5戦富士6時間
7号車トヨタGR010ハイブリッド(手前:TOYOTA GAZOO Racing)と93号車プジョー9X8(プジョー・トタルエナジーズ) 2022年WEC第5戦富士6時間

■「WECの将来は明るい」とルキアンCEO

──LMHクラス、LMDhクラスがハイパーカーとしてひとつになるとのことだが、ファンとしてはそれぞれがもつ性能で競い合って欲しいと思っているはず。今後、性能調整というものを無くしていく考えはあるか。
PF:
とは言っても、それほどハイパーカーの車両の性能は変わらない。パワーや空力も制限されているので、それほど変わらないんだ。また大事な点として、これほどのメーカーに参戦してもらえるということは、コストカットがうまくいっているということだ。また性能のためにメーカーが多くの資金を投入し、予算が爆発してしまうことを防ぐために性能調整というものがある。すべてのクルマが勝てるかたちでレースを行うことが望ましい。またメーカーも開発にかける予算を制限するはずだ。

 GTカテゴリーで見れば、もともとの出自がかなり異なるので、性能調整は必要だし、大変なものだが、ハイパーカーは調整はしやすいと思っている。

──WECが10周年を迎え、ルキアンCEOは前任のジェラール・ヌーブCEOの後を継ぎシリーズを担っているが、今後WECをどのように発展させたいと考えているか。
FL:
今までWECが築き上げてきたものを大事にしたいと思っているし、これほどの素晴らしいシリーズを引き継ぐことができ、うれしく思っている。私が就任したときは歴史の転換点にあると思っているし、2024年にはメーカーの参画が歴史上最も多いものになると思う。ただメーカーの参戦にあぐらをかかず、各メーカーとも緊密に話をし、将来に向けて決めていかなければならない。

 また、プロモーションにももっと力を入れなければならない。テレビもそうだし、メディアもそうだ。ありがたいことにWECは10周年を迎えたが、それから先も非常に明るいと思う。今後もどんどん発展させていきたい。

 それと、これまでメーカーやシリーズのことを話してきたが、シリーズを影で支える人たちのことを忘れてはならない。シリーズの成功のためには彼らの力が本当に大きいんだ。彼らの力とともに、シリーズを発展させていきたい。

WEC第5戦富士で日本のメディアの取材に応えたWECのフレデリック・ルキアンCEO
WEC第5戦富士で日本のメディアの取材に応えたWECのフレデリック・ルキアンCEO


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