9月24日に岡山国際サーキットで開催されたファナテック・GTワールドチャレンジ・アジア・パワード・バイAWS第9戦。メインカテゴリーとも言えるGT3プロ/アマクラスの表彰台には、タイトルを争うカーガイ・レーシング、トリプルエイトJMRとともに、ABSSAモータースポーツの小泉洋史と澤圭太が立った。マクラーレン720S GT3でジャパンカップにエントリーするABSSAにとっては、今季最終ラウンドで念願の初表彰台を手にした形だ。
国内カテゴリーを経て海外レースに挑戦を始めた澤は、2017年からWEC世界耐久選手権のLMGTEカテゴリーにも出場。ル・マン24時間レース参戦も果たした。また、GTWCアジアの前身シリーズであるGTアジアにも参戦経験がある。そんな澤は今季、2019年に立ち上げた自チームABSSA MOTORSPORTから、GTWCアジアへの参戦を決めていた。
前戦までも堅実なリザルトは残してきたものの、ここ岡山ではレース1(第9戦)予選でジェントルマンドライバーの小泉が全体の9番手と好調な滑り出しを見せた。他車の降格もあり7番手からスタートした決勝でも小泉が前半に堅実な走りを見せ、澤にバトンをつないだ。
終盤、澤にはポルシェとメルセデス、2台の海外勢が迫った。「危なっかしかったですが、最後はもう“強い気持ち”でいきました」と澤は2台の追撃を振りって総合4位/クラス3位でフィニッシュ。GTWCアジアに参戦する周囲の日本勢には世界戦や国内トップカテゴリーを舞台に実績を残してきたチーム/ドライバーも多いが、今回の表彰台獲得でABSSAもそこに並んだ、とも言えるだろう。
今季のGTWCアジアについて澤は、「こんなにレベルが高いとは思わなかった」と語る。
「こんなに表彰台が遠いレース(カテゴリー)は、僕自身も久しぶりです。それが、このシリーズのプロ/アマクラスのレベルの高さを物語っていると思います。見てもらえればわかるとおり、プロドライバーも“玄人好み”がそろっているし、アマチュアも日本のトップと言われる人たちばかりですからね」
「そこに対して今年、僕は自分たちが作ってやってきたチームで小泉さんと組んで出始めましたが、シーズン自体が短いので、なかなか流れを変えるのは難しかったです」
今回、好結果を出せたのは予選から比較的前へ行けたことと、レース前半に小泉が好位置をキープしてくれたことにある、と澤は語る。もちろん、その好走はマシンのセットアップがうまくいったことに支えられているのだが、そこにもひとつのポイントがあったという。
「GT3車両の難しい部分として、『ドライバーのフィーリングを追いかけていくと、タイムが出なくなる』という“あるある”があって。結局、このタイヤでこのクルマを走らせる場合の各種推奨値は、各マニュファクチャラーが出していますから、そこから外れないことが大事になるんです」
つまり、ドライバーがコクピットで得られるフィーリングを良くして行こうとすると、フィーリングは良くなるがメーカーの推奨範囲から外れ、タイムが出にくくなるというわけだ。
「今回の岡山では、今までで一番、セットをいじってないです。もう、持ち込み味付けしているだけ。(メーカーからの)データとタイムをあてにして、基本はいじらずに、ドライバーが合わせる。これでいいんだ、というのが再確認できました。それが今回、結果が出た要因だったと思います」
「まだ全体(総合順位)で4位ではありますが、うちのチームとしては過去最高ですから、これで一皮むけられればいいなと思います」