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ル・マン/WEC ニュース

投稿日: 2022.09.30 12:08

空港で鳴った不吉の前兆。アウディへの失望と“先輩の後押し”あったプジョー加入の裏側をニコ・ミューラーに聞く

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ル・マン/WEC | 空港で鳴った不吉の前兆。アウディへの失望と“先輩の後押し”あったプジョー加入の裏側をニコ・ミューラーに聞く

 2014年からアウディスポーツに所属し、DTMドイツ・ツーリングカー選手権を中心にさまざまでカテゴリーで活躍してきたニコ・ミューラー。9月14日には今季限りでアウディスポーツを離れることがプレスリリースと本人のSNSで発表され、その翌日にはプジョー・スポール加入が公式発表と、大きく世間を賑わせた。

 今季の活動やアウディとの契約終了について、そしてプジョーへの移籍の裏側や今後の目標などを、現在30歳のミューラーにじっくりと聞いた。

──今季のDTMは開幕戦優勝という幸先の良いスタートでしたが、途中リタイアが続くなど、苦しい展開が続いていますね。

ニコ・ミューラー:去年はクラス1からGT3マシンにスイッチし、初年度は手探りの状態で参加チームも少なかったが、今年は強豪チームが集まり台数もぐっと増えた。そのうえ、ドライバーのレベルもこれまで以上に上がり、昨年とは比べ物にならないくらいにフィールドは大きく成長した。

 とく今季のDTMはBoP(性能調整)を可能な限り平等にしたせいか、ものすごい接戦状態になっているし、サーキットによってメーカーのパフォーマンスが発揮しやすい・しづらいという特徴が顕著に見える。それだけに前方に立つということがどれだけ難しいか、身をもって思い知っている。さまざなGT3レースに参戦してきたけど、恐らく今季のDTMは、どのGT3シリーズよりもレベルが高く激しいのではないかと感じている。

──レネ・ラスト、ミルコ・ボルトロッティ、マルコ・ウィットマン、マーロ・エンゲル、マキシミリアン・ゲーツ、ファン・デル・リンデ兄弟、トーマス・プライニングをはじめ、ヨーロッパのトップGTドライバーがそろっていますが、この激しい毎戦をエンジョイしていますか?

NM:間違いないね! ときとして過度なバトルを仕掛けてきたり、アドレナリンが出過ぎるドライバーもいて、ムカつくこともあるけど、めちゃくちゃエンジョイしているのは間違いない。だから、リタイアせずにポイントを獲得すること、セッションを終えてマシンにダメージを極力ない状態でピットに戻すことが、どれだけホッとすることか(苦笑)。

──アウディ在籍中にはS1でラリークロス、RS5でDTMクラス1、フォーミュラE、GT3とあなたほど多様なマシンを駆りレースに出たドライバーはいなかったと思いますが、どのマシンが印象に残っていますか?

NM:もちろん、クラス1のDTMは特別だった。マシンのポテンシャルも最高だったし、競技規則もドライバーとしては良かった。スーパーGTとの将来も僕たちDTMはとても楽しみにしていたし、あのときは日独の素晴らしい未来を信じて止まなかった。

 マラケシュで行われたフォーミュラEのルーキーテストでは、自分のポテンシャルを発揮できて忘れられない日となったし、初めて乗ったラリークロスではクワトロでオフロードのガチンコ勝負での激しさにビックリしたし、生まれてはじめて自分の限界まで攻めたよ(笑)。

 フォーミュラしか知らずにアウディのワークスドライバーになった僕に、アウディがこんなにさまざまなマシンで数多くのレースに挑戦させてくれたお陰で、キャラクターの違うメカニズムやドライビングスタイルを数多く学び、ドライバーとして成長し、引き出しを多く作ることができた。本当に感謝しかないね。ひとつのカテゴリーに留まることなく、これらのチャレンジは今後もずっと続けるつもりだ。来季はフォーミュラEとWECというまったく違うカテゴリーに平行して参戦できることも楽しみで仕方がない。

2020年DTM最終戦ホッケンハイムで、レネ・ラストとバトルを繰り広げる51号車のニコ・ミューラー
2020年DTM最終戦ホッケンハイムで、レネ・ラストとバトルを繰り広げる51号車のニコ・ミューラー

──今季はGTワールドチャレンジ・ヨーロッパのエンデュランス・カップで、WRTから参戦する元MotoGPライダーのバレンティーノ・ロッシのチームメイトでもありましたね。

NM:バレンティーノはとても素晴らしい人柄で、クールガイだよ。カテゴリーが二輪から四輪に変わったと言えども、彼の学びに対する貪欲な姿勢やその成長、吸収力はすさまじく、そんな彼と組んでGTワールドチャレンジやスパ24時間レースに挑戦できたことはとても栄誉なことだったし、彼とのレースを心から楽しんだよ。

 できることなら、彼の四輪レースキャリアをこのまま一緒にタッグを組んで戦いたかったけれど、来年はもう一緒にレースができないと思うととても残念だ。GTワールドチャレンジの最終戦のバルセロナでは、彼との時間を心から楽しもうと思う。

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