更新日: 2022.11.13 11:54
「これじゃ走りきれない!」ギヤを失ったフェラーリ、“即席の対処法”で劇的なタイトル獲得/WECバーレーン
WEC第6戦バーレーン8時間レースにおけるLMGTEプロクラスのタイトル争いは、劇的な幕切れが待っていた。レース終盤の2時間に入るまでトップを快走していたAFコルセ51号車フェラーリ488 GTE Evoがギヤボックスのトラブルに見舞われ、クラス最後尾まで順位を下げながらもタイトルを目指して力走したのだ。
ドライバーのジェームス・カラドは「クルマが息絶えるまで、走り続ける覚悟があった」とレース後に激闘を振り返り、彼らがマシンを何とかゴールへと運んだ裏側について明かした。
■「突然、車内に爆弾が落ちたような音がした」
カラドとアレッサンドロ・ピエール・グイディはレース序盤、ライバル勢が最初のルーティンピットを済ませた直後に、フルコースイエロー(FCY)とピットタイミングが合致するという幸運も得て、大きなリードを手にしてレースを優位に進めていた。
ポルシェGTチームの92号車ポルシェ911 RSR-19(ケビン・エストーレ/ミカエル・クリステンセン)組に対して11点のリードでこの最終ラウンドに乗り込んできた彼らにとっては、ドライバーズタイトル獲得に向け楽観的な状況だった。加えて、ポルシェと同点で迎えた決勝でのマニュファクチャラーズタイトル争いにおいても、2番手に僚友52号車(ミゲル・モリーナ/アントニオ・フォコ)が浮上、ワン・ツーとなったことで、これ以上ないフィナーレへと突き進んでいた。
しかし残り2時間の時点で、51号車は深刻なギヤボックストラブルに見舞われてしまう。カラドがステアリングを握っているときに、それは発生した。
「マシンに乗り込んで、2回目のダブルスティントまでは何も問題がなかったんだけど、そのときおかしな音がしたんだ」とカラドはレース後に語った。
「最初は振動のようなもので、何が起きたのか分からなかった。ときどき、金属かなにかのような振動がするんだ」
「すぐに、4速ギヤだけが音を出していることに気づいた。それで、『これはまずいことになった』と思ったんだ。だんだん酷くなっていったものの、その後しばらくは安定していたし、ギヤシフトもうまくいっていたんだ」
「だけどある周に突然、車内に爆弾が落ちたような音がして、金属音があちこちから聞こえてきて、ギヤが入らなくなった」
「コース上に留まりながら、いろいろなコンビネーションを試してみた。リタイア寸前というところまで行ったけど、いくつかのギヤは機能することに気づいたんだ」
「だから5速ギヤのまま周回を重ね、最後はアレッサンドロにドライバー交代した」
カラドはガレージにマシンを入れることなく、通常どおりの作業でピエール・グイディにバトンを渡したが、GTEプロクラスの最下位である5番手に転落してしまった。