3月10日(金)、アメリカ・フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイでは、翌日から始まる公式テスト“プロローグ”に向け、WEC世界耐久選手権の2023年シーズンに参戦するチームとドライバーが走行に向けた準備を進めた。
11〜12日の2日間にわたって行われるプロローグには、来週末の第1戦セブリング1000マイルレースに出場する37台が参加。4セッション計12時間30分の走行が予定されており、ここでデビューを果たすマシンも多いとあって、開幕前週の重要な走行機会となる。
ここでは走行を翌日に控えたセブリングのパドックから、2023年最初の各種トピックスをお届けしよう。
■CGRキャデラックは『擬似2台体制』目指す
このプロローグでは、フェラーリ499Pとヴァンウォール・バンダーベル680が初めて公式セッションでの走行を迎える。フェラーリの新しいハイブリッドエンジン搭載のLMH(ル・マン・ハイパーカー)は、3月に入るまでに24,000kmのテストを完了したという。その後、今月初めにポルトガルのポルティマオで耐久テストを行ったが、その時の走行距離は不明だ。
ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツも2月下旬にポルティマオで3日間のセッションを行い、WECに参戦する2台のポルシェ963を走らせた。
来週末のレースは、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第2戦セブリング12時間レースとの併催となる。キャデラックVシリーズ.Rとポルシェ963は、セブリング1000マイルとセブリング12時間で同じBoP(性能調整)値で走ることになっているが、ホモロゲーション取得のための風洞試験が、IMSAはウインドシア、WECはザウバーの施設で行われたため、空力の仕様には若干の違いがあるという。
キャデラック陣営のチップ・ガナッシ・レーシング(CGR)のグローバル・ディレクターであるマイク・オガラによれば、シリーズ固有のデータロガーシステムが、最大の違いだという。もうひとつの違いはタイヤで、WECのハイパーカークラスではミシュランのSLT(低温用ソフトタイヤ)とSHT(高温用ソフトタイヤ)の両方のコンパウンドが使用できるが、IMSAのGTPクラスではSHTのみが使用される。
「IMSAの(2月の)オープンテストは01号車で行い、今回は2号車でプロローグを走行する。これは、別々のデータにすぎない」とオガラ。
「我々は(来週のレースで)それぞれのシリーズで1台のマシンを走らせるわけだが、これらのデータを2台体制のチームと同じように扱わなければならない。あとは、ふたつの異なるパドックでそれを行うだけだ」
キャデラックはこれまで、ヨーロッパでの走行テストを行っていないが、CGRはル・マン前にその機会を持つことを望んでいるという。
なおCGRは来月、シーズンの欧州連戦開始を前に、ドイツの新しいLMDh施設に移転する予定だ。この施設は、シュトゥットガルト近郊のヴェンドリンゲンにある。
チームマネージャーのスティーブン・ミタスは、「かなり難しいスケジュールだった」と語った。「以前は他の人が使っていた施設であり、中にはレーシングカーも入っているんだ」。
■現存するバンダーベル680は2台
ヴァンウォール・バンダーベル680は、先週の木曜日にセブリングに空輸され、その1週間前にFIAホモロゲーションテストを受けたと、チームの運営責任者ボリス・ベルメスは明らかにした。
セブリングに登場したバンダーベル680は、2番目のシャーシとしてテストプログラムに使用される。
現在、ヴァンウォールLMHは2台現存しており、もう1台はドイツにあるヘッドクォーターに戻されている。セブリングに登場した車両は、第2戦ポルティマオ6時間レースへの出場も決まっている。
■ドライバー未決のチームが4名でエントリー
アクシル・ジェフェリーズとトーマス・メリルが、LMGTEアマのノースウエストAMR98号車アストンマーティン・バンテージAMRから、プロローグに参加することになった。
98号車は第1戦向けのエントリーリストで唯一ドライバー名に未定の箇所があり、ポール・ダラ・ラナおよびニッキー・ティームとトリオを組むシルバードライバーが決定していないが、ジェフェリーズとメリルの参加により、プロローグでは4名のドライバーがドライブすることとなった。