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投稿日: 2023.10.03 17:01
更新日: 2023.10.03 17:02

ル・マン王者の実弟が“ボス”。欧州の女性チーム幹部が明かす『ウーマン・イン・モータースポーツ』のリアル


ル・マン/WEC | ル・マン王者の実弟が“ボス”。欧州の女性チーム幹部が明かす『ウーマン・イン・モータースポーツ』のリアル

 FIA世界自動車連盟が女性のモータースポーツや自動車産業での活動の推進を目的として発足した『ウーマン・イン・モータースポーツ』。世界各地のモータースポーツの現場でも、ドライバーだけでなくさまざまな職種で女性の活躍が広がりを見せている。

 DTMドイツ・ツーリングカー選手権でチームマネジャーとして活躍するジェニファー・ライニングも、そのうちのひとりだ。

 彼女の場合に特徴的なのは、ル・マン24時間レース優勝、そしてニュルブルクリンク24時間レース最多優勝など、ポルシェワークスドライバーとして世界を舞台に輝かしい功績を残し、現在はポルシェのブランドアンバサダーを務めるティモ・ベルンハルトを実弟に持つということ。そして、その弟が代表取締役兼監督として率いる『チーム75ベルンハルト』に、マネジメントとして関わっていることだ(※欧米におけるチームマネジャーとは、文字どおりマネジメント=管理者)。

 弟の右腕となり采配を振るうライニングに、ヨーロッパのモータースポーツ界で働く女性の実状を訊いた。

■幼少期にはティモとともにカートも経験

──あなたがモータースポーツに関わり始めたのはいつからですか?

ジェニファー・ライニング(JL):テレビ技師をしていた父が、若い頃から趣味でアマチュアのレースへ出場しており、1975年に自身の小さなチームを立ち上げて母は父の手伝いをしていました。私は生後3カ月からニュルブルクリンクに連れられてきており、エキゾーストノートや工具の音が子守り歌代わりで、当時サーキットにいた大人の方々にかわいがってもらって成長しました(笑)。私は1976年生まれなので、父のチームと一緒に成長したようなものです。

──あなた自身もレースに出ていたのですか?

JL:5歳年下の弟のティモと一緒にカートを始めました。どこか有名なチームに所属するということはなく、父がメカニックとして私たち姉弟のカートのメンテナンスをしてくれていましたね。

──いつ頃からモータースポーツの仕事に就くことを考え始めたのですか?

JL:生まれた頃からどっぷりとモータースポーツに浸かっていたこともあり、子どもの頃からなんとなくこの仕事には興味を持っていました。その後、大学時代や就職してからも副職として手伝っていましたが、その頃は一般のIT企業で正社員としてフルタイムで働いていました。

 ある日、チーム75ベルンハルトで長年チームマネジャーを担っていた方が転職することになり、弟や両親と長い時間、何度も話し合いを重ねた結果、弟のサポートをすべく、思い切ってIT企業を辞めて2019年から弟のチームへ加入することを決心したのです。

チーム75ベルンハルトの代表を務めるティモ・ベルンハルト
チーム75ベルンハルトの代表を務めるティモ・ベルンハルト

──いきなりプロチームのマネジャーは、ハードルが高くありませんでしたか?

JL:マネジメントを大学で学んだわけでもなく、どこか他のプロチームで修行した経験もありませんでしたが、IT企業勤務時代に長年オペレーションマネジメント業務をしていたことと、幼少の頃からモータースポーツで働く両親や周りの大人たちを見ていたこと、そしてチームの手伝いをしていたことで意外とすんなりと入ることができました。

 もちろん、私の両親はプロフェッショナルとしてではなく、あくまで趣味のモータースポーツ活動を何十年もやっていましたので、私が学生時代に手伝っていたことはあくまでアマチュアの領域でした。弟が代表を務めるこのチームは完全なプロのモータースポーツの会社組織ですから、2割の部分は実際に入ってから実践で『プロの業務』を学んでいったのです。

 また、弟がポルシェの現役ドライバー時代はポルシェワークスの裏方の仕事をずっと間近で見ていたこともあり、本職としてモータースポーツの仕事をすると決めた時に、生半可な気持ちでできるものではないと覚悟を決めました。

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