松下信治のヨーロッパ挑戦3年目のシーズンが終わった。レーシングドライバーとしては、間違いなく今までで最も速く強い自分になれた。アブダビでF2最終戦を終えた後、松下はそう語った。しかしランキングは6位。スーパーライセンス獲得のために目指していた3位には及ばなかった。
何が苦戦の原因だったのか?
最大の理由は、ARTがいまやトップチームとは言えないレベルに低迷してしまったこと。有力エンジニアが抜け、かつてストフェル・バンドーンが圧勝したときのような速さがなかった。
「一番大事なのはレースペースだと痛感した1年でした。例え予選で中団になってしまったとしても、プレマにしてもロシアンタイムにしても、レースペースが速いチームって絶対に上がってくるんですよね。安定して結果を残していくためにはやっぱりレースペースが必要なんです。そこが僕らは良い時もあるけどそういう時が少なかったし、チームとしてその点で負けていたのは確かでした。ドライバーがそこを導き出せなかったという面もあるんでしょうけど……」
レース週末は毎晩のように遅くまでエンジニアとデータを分析し、遅い理由を見付け出し、次のセッションに向けてセッティングを変え、日曜のレース2になってようやく方向性が見えてくるといったようなことの繰り返しだった。
「ハンガリーあたりからは『なんとなく分かったかも』という感触はありました。ハンガリーのレース2は今季のベストレース。でも前半戦からそういうパフォーマンスが発揮できなかったのが一番大きかった。バクーみたいに自分のミスによる取りこぼしもあったし。遅くて結果が出なかったのではなくて、速かったのに自分のミスで結果を失ったという意味では、バクーがワーストレースでした」