スーパーフォーミュラ、そしてスーパーGTのダブルチャンピオンに輝き、2019年のトロロッソ・ホンダ入りを目指してF1最終戦アブダビGPの地を訪れた山本尚貴。現地でF1参戦の意思をアピールし、翌日月曜日にホンダ青山で開催されたスーパーGTのファンミーティングでもF1のチャンスについて語っていたが、無情にもその日の夜、トロロッソ・ホンダはアレクサンダー・アルボンの起用を発表。すでに決定していたダニール・クビアトとのコンビとなり、山本の来季のF1挑戦は断たれることになってしまった。
その翌週に迎えた鈴鹿サーキットでのスーパーフォーミュラの合同テスト。山本はどのような心境でこの一週間を過ごし、そして、スーパーフォーミュラのテストに臨むことになったのか。鈴鹿サーキットでの初日テストを終えた山本に聞いた。
「正直、アブダビに行く前、事前の情報で彼(アルボン)になりそうだというのは聞いていたし、アブダビに行ってからもその状況は分かっていた」と、改めてその時の状況を振り返る山本。
「アブダビに行ったら、向こうでどういうことが起きていて、どういう状況なのかが分かるだろうと思ったので、いろいろな可能性に賭けて行ったんですけど、アブダビに行った時点で彼に決まりそうだという話は耳に入っていました」と続ける山本。
そして帰国した翌日、アルボン決定を知ることになる。
「厳しい状況であることは分かっていたけど、それでも知らない世界だったので一度、本気で見てみたいと思いましたし、それなりに腹を括って覚悟を決めてあの地には乗り込んだので、ドライバーが決まってしまったと聞いたときには正直、残念に思いました。来年のF1の開幕戦に僕が乗ることは100パーセントなくなったので当然、残念な気持ちになりました。その反面、やはりこの短い期間、タイミングで手を挙げて乗れるほどF1の世界は甘いものではないし、そんなに簡単じゃないというのも分かっていたので『仕方ない』と思えた部分、『当然だよな』と思った部分もあります」
そこから今回のスーパーフォーミュラのテストまで約1週間、山本はどのような気持ちで過ごし、そして、今回のテストに臨むことになったのか。
「F1を目指している方には失礼ですし、申し訳ないんですけど、本当に毎年毎年『F1に乗りたいです!』とアピールしつづけて、スーパーフォーミュラのタイトルを獲って、F1に乗ることができる権利が得られると分かっていて戦っていたわけではないので、もしそのマインドを持ってアブダビに行って、この結果を知ったら当然、気持ち的にはかなり落ち込んでいたと思います」
「でも、僕はもともと手の届くところに自分がいるとは思っていなかった。だけどふたつタイトルを獲らせてもらって、ホンダのドライバーとして一番の権利を得て、チャンスがあるということで手を挙げさせてもらいましたけど、本当に瞬間的にいろいろなものごとが動いたので、今回のスーパーフォーミュラのテストなどに特になにか影響があるわけではありません」