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投稿日: 2019.06.24 07:02
更新日: 2019.06.24 07:07

ギャンブル含みだった1周目ピット戦略と、讃えたい可夢偉と野尻の果敢なオーバーテイク《スーパーフォーミュラ第3戦決勝あと読み》

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スーパーフォーミュラ | ギャンブル含みだった1周目ピット戦略と、讃えたい可夢偉と野尻の果敢なオーバーテイク《スーパーフォーミュラ第3戦決勝あと読み》

 山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)のポール・トゥ・ウインとなったスーパーフォーミュラ第3戦SUGO。ポールの山本は王道の戦略で勝利を飾ったが、今回のレースで印象的だったのが、SF19と今年のヨコハマタイヤのパッケージによるスタート直後のタイヤ交換戦略。2番手以下の戦いは、今季のスーパーフォーミュラの戦い方をまさに象徴していた。

 SUGOの決勝レースではレース距離の68周を走りきるにはガソリンが3~5周分足りなく、タイヤの摩耗はミディアムより1秒以上速いソフトタイヤは60周を過ぎてもミディアムよりもラップタイムが速い状況だった。今季の1~2戦で見られたように、ミディアムタイヤでの走行を出来るだけ少なくするのがセオリーとなるため、今回もスタートでミディアムタイムを選択して1周目にソフトタイヤに履き替えるのがタイヤ選択としてはベストの戦略だったが、そこでネックになるのが燃費だった。

 グリッドに着いてフォーメーションラップを終えてから68周を走り切るにはおよそ3周前後、ガソリンが足りなく、1周目にピットインして給油をしなかったドライバーたちはコース上で約3周分を稼ぐ燃費走行をしなければならなかった。3周目に入った石浦宏明(P.MU / CERUMO · INGING)も燃費走行が必要な状況だったというから、1周目、2周目にピットインした7台のドライバーたちは相当な燃費走行を強いられていた。実際、セーフティカーが入らなければガス欠の可能性も高かったドライバーも多かったようで、エンジニアによっては「ほぼギャンブルに近い戦略」が、1周目ピットイン&給油をしないという戦略だった。

 そのなか、1周目にピットインしてタイヤ交換しながら給油を行っていたのが小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)だ。可夢偉は同じく1周目にピットインして給油を行わなかったニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)の後ろでコースインすることになり、2周目から50周目までキャシディとバトルを繰り広げることになった。

 今年の新型マシンSF19はダウンフォースがSF14より大きくラップタイムが速いが、その分、レースでは前のクルマの後ろについたら後続車は前のマシンの乱気流でダウンフォースが乱れ、オーバーテイクがこれまで以上に難しい状況になる。可夢偉は「ディフェンスで使われて全然、抜けなかった」と、オーバーテイクシステムをすべて駆使しながら、キャシディもディフェンスでオーバーテイクシステムを使って対応し、50周近く順位を守っていた。

 その均衡が破れたのが51周目だった。燃費が厳しくなったか、キャシディは可夢偉とのバトルに対応しきれず、可夢偉が「ようやく最後は諦めてくれたところでオーバーテイクできた」と、51周目のストレートでキャシディのスリップに入ることができて、1コーナーでインを差し、この時点で8番手にアップすることができた。

 そして2度目のセーフティカー明けには可夢偉は2番手のルーカス・アウアーを追い、66周目の4コーナーでアウアーが周回遅れに引っかかったところを見逃さず、アウトから大外刈りのようにオーバーテイク。「“ラッキー! いただき!”という感じです」と、可夢偉は運を強調したが、一瞬の隙を突いた可夢偉の好判断とオーバーテイクのスキルが光ったシーンだった。

 同じく、今回のレースで大きなハイライトとなったオーバーテイクシーンとして、野尻智紀(TEAM MUGEN)のアタックを讃えたい。結果はご存知のように、2番手のアウアーにオーバーテイクを仕掛けて1コーナーで飛び出してグラベルに捕まりリタイアとなってしまったが、オーバーテイクが難しいSUGOでインに飛び込んだ勇気と覚悟はかなりのものだったはずだ。レース後の野尻が振り返る。

■次回もトライしてほしい野尻のオーバーテイク。SUGOで見えたホンダ、トヨタのエンジン対決

2019年スーパーフォーミュラ第3戦SUGO
3番手からオーバーテイクを試みた野尻智紀(TEAM MUGEN)


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