スーパーフォーミュラ第5戦ツインリンクもてぎでスーパーフォーミュラ初優勝を飾った平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)。今季のスーパーフォーミュラは5戦目で平川が5人目のウイナーとなったように、まさに混沌のシーズンを迎えている。その混沌ぶりを象徴するように、第5戦の決勝の各チームのストラテジーもさまざまな多様性を見せた。
結果的に優勝の平川と2位の小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)はソフトタイヤスタートでレース終盤にミディアムに代える王道パターンを選択したが、3位を獲得したのは5周目にルーティンのピットストップを終えたニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)。平川が「6周目の最終コーナーでストップ車両が出たときにセーフティカーが入っていれば、ニックが優勝でしたね」とレース後に話すように、平川にとっては運も味方する形でのスーパーフォーミュラ初優勝となった。
戦略の違うドライバーがそれぞれ表彰台に上がることになったが、優勝した平川も実はレース前には2ピットと1ピットで戦略を悩んでいた。このもてぎ戦から平川車の担当となった大駅俊臣エンジニアが振り返る。
「理論上は2ピットの方が速くて、2番手スタートから2ピットで後ろを離して勝つというのも考えて最後まで悩みましたが、最後の最後のミーティングで1ピットに決めました。最後に平川が『勝ちたい』と。だったら奇をてらった作戦じゃなくて王道で戦って、それで後続のマシンが2ストップ戦略で前に行かれても、それは仕方ないと」と大駅エンジニア。平川の希望も最終的に1ストップで、両者の意見が一致することになった。平川が振り返る。
「予選のパフォーマンスはたしかに(アレックス)パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)が速かったですけど、僕らは日曜日のフリー走行で結構周回してダメージのあったタイヤでもロングランのタイムがそれなりに悪くなくて手応えがあったので、決勝はこっちの方が速いと自信を持っていました」と平川。
平川は燃料満タンスタートではなく、ピットストップでロスする時間(約6~10秒)分の燃料を差し引いた37周分の燃料を搭載してスタートしていた。「最初の5周は向こう(パロウ)の方が速かったですけど、その後、追いついていきました」と平川が話すように、若干軽めの平川の方がパロウのペースを上回っていった。
一方、ポールポジションのパロウは、ソフトタイヤ&満タンスタートだったが、実はマシンはロングランでのセットアップがまったく決まっていなかった。パロウ担当の加藤祐樹エンジニアが話す。
「日曜午前のフリー走行でサスペンションにトラブルが出てしまって、ロングランがまったくできなかったんです。それで8分間のウォームアップ走行でマシンを確認するのが精一杯で、その後の対応が後手後手になってしまいました」と加藤エンジニア。
日曜午前のパロウはまさかの最下位20番手。セットアップの決まっていないマシンでほぼぶっつけで決勝に臨んだが、リヤタイヤの摩耗が激しく、コーナーが立ち上がりで厳しくなったか、23周目にはバックストレートで2番手の平川にインに入られて並ばれ、90度コーナーを並走するもその先のコーナーでトップを奪われてしまった。