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投稿日: 2019.08.22 21:00
更新日: 2019.08.23 07:53

新興勢力健闘のスーパーフォーミュラ、5戦3入賞とアウアーも善戦中。スーパーGT×DTM交流戦出場の期待も?

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スーパーフォーミュラ | 新興勢力健闘のスーパーフォーミュラ、5戦3入賞とアウアーも善戦中。スーパーGT×DTM交流戦出場の期待も?

 2019年のスーパーフォーミュラの特徴のひとつとして、新人あるいはここでのキャリアが浅い選手の健闘が目立つ、ということが挙げられるだろう。新車イヤーらしい傾向ともいえるが、DTMからやってきた新人ルーカス・アウアー(B-Max Racing with motopark)もその一翼を担うドライバーだ。第5戦もてぎでは予選4位、決勝でも7位で今季3度目のポイントスコアを果たした。今後は日本のハコ方面での活躍も期待したくなる存在である。

 一概にはいえないが、ハード面に刷新ありというシーズン背景は、どちらかというと新興勢力にプラス、既存強豪にはマイナスに働くもの。実際、SF19シャシーへの切りかえ年である今季のスーパーフォーミュラでは、その傾向が感じられてもいる。

アレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)
アレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)

 新人のアレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)が既に1勝して、現在シリーズランキング3位。昨季の全日本F3選手権を圧勝で制してステップアップしてきた坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)は決勝最高2位で、ランキングでは5位につける。そしてフル参戦は今季が初めてになる福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)も5戦中3回が5位という成績的安定感を発揮し、坪井と同点でランキング6位だ。

坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)
坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)

 もちろん、「そもそも新人や若手が多い」、「ポイント5位以降は大接戦」というツッコミ要素もありはするが、シリーズトップ6のうち3人が新人もしくはそれに近いキャリアの選手であるという現況からも、ローキャリア組優位の傾向は確実にあると思えるところ。そしてチャンピオン争いに顔を出しているパロウに比べれば地味ながら、ルーカス・アウアー(B-Max Racing with motopark)もなかなかの戦いぶりを見せている。

 開幕戦鈴鹿で7位に入賞すると、第3戦SUGOでは予選・決勝とも3位に。そして今回の第5戦もてぎの予選で4位と再び存在感を示した。レースでも前半は概ね5番手をキープ。後半に少々厳しい展開に陥ったとはいえ、7位でシーズン3度目のポイントゲットを果たしている。目下10ポイント、ランキング的には11位だが、坪井や福住とは2ポイントしか離れておらず、アウアーにもシリーズランキング上位で今季を終えられる可能性は充分に残っている。

「(5レース中)3度目のポイントゲットとはいっても、予選4位だったわけだからね」。入賞したとはいえ予選順位からは3つ下がってのゴールだけに、もてぎ戦に対する本人の満足感があまり高くないのは無理からぬところか。

 決勝終盤はミディアムタイヤで8番手を走行、後方にソフトで追ってくるマシンが7台ほど連なるという“アウアー・レーシングスクール開講状態”をしのぎ切り、最終周の上位のピットインで7位入賞を得た“熱戦”、それほどわるい内容ではなかったとも思えるが、アウアー自身はこう振り返っている。

「最後はディフェンスするレースになった。でも、戦略(ソフト装着スタートで後半に1ストップ)は正しかったと思うんだ。予選でのペースが良くなっているのに比べて、我々には決勝のペースにまだ課題が多いようだね。今日のマシンバランスは、どちらのタイヤでも素晴らしく良いとはいえなかった」

 アウアーはしっかり課題を見据え、岡山国際サーキットでの次戦を睨む。「今回のレースのことをしっかり解析する必要がある。そしてオカヤマに向けて、チームと一緒にさらなるステップを踏みたい」

ルーカス・アウアー(B-Max Racing with motopark)
ルーカス・アウアー(B-Max Racing with motopark)

 アウアーは9月11日で25歳。最近のフォーミュラレースの潮流的には際立って若いというわけではない。また、DTMというトップシリーズで4シーズン戦って優勝経験もあるキャリアのせいもあって、あまり“新人感”のない存在かもしれないが、いずれにしても初参戦のスーパーフォーミュラ、慣れないコースばかりの日本での今季ここまでの成績は立派なものだろう。

 特に公式テストのなかったSUGOやもてぎでの得点は、彼自身のポテンシャルの高さを感じさせる。次の岡山も公式テストがないコースでの初実戦ということになるわけで、再びの表彰台を狙うアウアーの戦いに注目したい。

 ところで昨年、「アウアーが2019年は日本で走るかもしれない」という噂が出始めた頃、彼の主眼は「GT500ではないか」という話も聞こえてきていた。DTMでの実績があるアウアーだけに当然とも思える観測だったが、実際にはスーパーフォーミュラで初の日本フル参戦が実現した。

DTMでレースをリードするアウアー

 そしてアウアーは今年8月3日、DTMの管轄団体ITRのゲルハルト・ベルガー代表とともにスーパーGT第5戦開催中の富士スピードウェイに姿を現した。アウアーがベルガー代表の甥であることを考えれば、自然なかたちの“御付き”ではあったわけだが、来季2020年に向けては現段階でどんな考えをもっているのだろうか。スーパーフォーミュラとGT500のダブル参戦は!?

「日本でレースをするなら、スーパーフォーミュラとGT500の両方に出るのがベストプログラムであることは間違いない。スーパーGTはとても『クール』なシリーズだと感じているし、GT500とDTMの協調も進んでいるからね。でも今は、まず今シーズンのスーパーフォーミュラをしっかり戦い切ることだけを考えている。(最終的な目標はF1?)僕の目標は毎日、常に『メイク ベスト』することだよ」

 地に足をつけた言動は、昨年末のスーパーフォーミュラ鈴鹿テスト参加時から印象的に思えたアウアー。それでいてベルガー譲りのウィットもあるキャラクターなので、ぜひGT500での戦いも見てみたいドライバーだ。

 そして来季の前には今年11月、富士でスーパーGT(GT500)とDTMの交流戦がついに実現する。DTM側の参加予定台数は6~10台とベルガー代表は富士来訪時に語っており、ドライバーは1台1名とは限らない可能性(土・日で別選手起用)も示唆していた。富士での今季レース経験をもつ元DTM戦士アウアーは、彼が参画していた陣営であるメルセデスこそもういないが、DTM側の貴重な戦力になれるのではないか。

 それを訊くとアウアーは、「確かに僕は富士を知っている。でも、今は『Let’s See』だね。マニュファクチャラーがなんて言うかな(笑)。うん、まあ『Let’s See』だよ」と、笑いながら答えてくれた。この話題に関しての『Let’s See』はいろいろな解釈ができるフレーズだが、「状況を見てみようよ」というような意味に思える笑顔だった。アウアー起用はベルガー代表の脳内構想にあってもおかしくはないプランだと思うが、さて……!?


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