ドライバーやメカニック、チーム関係者をはじめ、さまざまな職種の人たちが携わっているモータースポーツの世界。ドライバーなど、目につきやすい職種以外にも、陽の目を浴びない裏方としてモータースポーツを支えている人たちが大勢いる。そこで、この連載ではレース界の仕事にスポットを当て、その業務内容や、やりがいを紹介していく。

 第3回目も引き続き、エンジニアに着目。今回はTOM’Sの東條力エンジニアに話を聞いた。(インタビューはスーパーフォーミュラ第4戦富士で実施)

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 東條エンジニアは、自動車ディーラーの整備士として働いた後、1992年に株式会社トムスへ入社。その後すぐに関谷正徳のエンジニアに任命されると、その2年後には全日本ツーリングカー選手権で関谷のチャンピオン獲得に貢献。それ以降、TOM’Sのエンジニアとして数々のレースを戦ってきた人物だ。

東條力エンジニアはスーパーGTでもau TOM’S LC500のレースエンジニアを務めている
東條力エンジニアはスーパーGTでもau TOM’S LC500のレースエンジニアを務めている

 2019年もスーパーGTではau TOM’S LC500のレースエンジニア、全日本スーパーフォーミュラ選手権では中嶋一貴がドライブするVANTELIN TEAM TOM’Sの36号車でレースエンジニアを務めている。

 国内で誰もが認める日本を代表するレースエンジニアのひとりとなった東條エンジニアだが、「もともとエンジニアになろうと思っていたわけではなくて、高校生くらいの時はプロのミュージシャンになろうとしていた」という。

「(学生時代に住んでいた場所の)近くにトヨタのディーラーがあったから、そこに行こうと思って。そうしたら整備士の学園を紹介されて、そこからメカニックの道へ。10年くらいやったのかな」

「その間、友達とレースに出たりしていました。当時F1も流行っていて、トムスもF1をやるという噂を聞いてトムスにメカニックで入ったんですよ。入社して3~4カ月すぎたころに、関谷さんを担当していたエンジニアが辞めてしまって。そこからエンジニアになりました」

 前回取り上げた杉崎公俊エンジニアとは異なり、メカニックからエンジニアの世界へ足を踏み入れた東條エンジニア。仕事をはじめるにあたり、雑誌や本、実務を通してエンジニアとしての知識を深めていったという。

「大学で(機械工学などを)専攻していたわけではないので、会社に入ってから覚えました。パソコンやインターネットがある時代ではなかったから、レポートも手書きだったし、調べる方法もレーシングオンとかオートスポーツとか本くらいしかなかった」と東條エンジニア。

「そういう本を読んで勉強したし、担当するドライバーが関谷さんだったから、いろいろ教えてもらって勉強しましたね」

「当時はとにかく勉強しました。昔はグループCやF3のマシンも作っていたんですよ。本当に忙しくて働いてる時間は今の3倍。メカニックの手伝いもしていたし、自分もエンジニアの仕事がよくわからないから、いろいな本を読んだりして勉強しました。教材が身近にあったんですよね、昔は」

「今はすぐ調べられるじゃないですか。僕もスマホで調べちゃいますけど。今は今のやり方があって、聞けばわかるし、調べればわかる。僕たちが5年、10年とかけてきたことも、15分くらいで分かってしまうこともある。そういう意味では今の方が楽ですよね」

 そうしてレースエンジニアとしての道を歩み始めた東條エンジニアは、この仕事は「決めること」が役目と表現する。

「結局なんでも決めないといけないんですよ。タイヤはどれを持ち込むのか、(各セッションで)どれを履くのか、セッティングをどうするのか、ガソリンはどれだけ積んで、何周目にピットインするのか……」

「いろいろなことをどんどん決めていくから、決めることが仕事なのかなと今は思っています」

「スーパーフォーミュラの場合、36号車は僕、37号車は小枝(正樹)というレースエンジニアが担当しています。もちろん総合的には後で話をしますけど短いセッションでは、僕と小枝君で分担しますね」

レースウイーク中、東條力エンジニアはドライバーたちと言葉を交わして「決めて」いく
レースウイーク中、東條力エンジニアはドライバーたちと言葉を交わして「決めて」いく

「僕自身はドライバーと話をしていて、同時にデータをチェックすることはできないから、あらかじめ見てもらうところはデータエンジニアに任せてある。自分は見なくてもだいたいわかりますからね」

■東條エンジニア流の働き方。持ち込みセットは「ずっと考え続けている」

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