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投稿日: 2020.11.30 12:00
更新日: 2020.12.10 14:36

【SF最終戦富士特別連載(2)】“極寒の富士”で悩めるタイヤウォームアップと究極のスピード域

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スーパーフォーミュラ | 【SF最終戦富士特別連載(2)】“極寒の富士”で悩めるタイヤウォームアップと究極のスピード域

 2020年シーズンは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、変則的なスケジュールが組まれてきた全日本スーパーフォーミュラ選手権も12月19、20日に富士スピードウェイで開催される第7戦で最終戦を迎える。

 前身の全日本選手権フォーミュラ・ニッポンから見ても、富士で12月にトップフォーミュラのレースが行われるのは今年が初めてであり、時期的にはかなり低い気温下での開催になる。そして、チャンピオンを賭けた今季最後の戦いは、この“極寒の富士”で類を見ないハイスピードの予選、ハイスピードでのバトルが大きな見どころになりそうだ。

 この寒い時期での開催を前に、最大の懸念材料と言われていたタイヤのウォームアップに関しては先日、第5戦以降はタイヤウォーマーが導入されると発表されたことで展開が変わった。タイヤウォーマーの導入により、ウォームアップにかかる時間は短縮され、アウトラップでのクラッシュのリスクも回避できるとあって、安全面を考慮してもその効果は絶大だ。

 特にレースにおいてもウォームアップにかかる時間の短縮という面での影響は大きく、スーパーフォーミュラで2度のチャンピオンを獲得した経験をもつ石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)に12月の富士でタイヤウォーマーを使用せずに走ったら、と仮定の話を聞いたところ、驚きの答えが返ってきた。

「冬の富士のテストでベストタイムが出るまでに、コールドタイヤならだいたいウォームアップで7〜8周はかかります。コンディションによっては10周かかることもある。タイヤウォーマーがなければ『冬×富士』という相性はかなり難しいですよ(苦笑)」と石浦。

「気になるのはスーパーGTの冬のテストでタイヤウォーマーを使用したときの感覚だと、走りはじめの最初はグリップがあってタイムが出ても、走っている間に逆にタイヤが冷えていくことがある。まっすぐ走っているとタイヤは冷えるので、長いストレートがある富士ではそういうこともあり得ますよね」

 つまりタイヤウォーマーの導入はプラスの面が多い一方、富士スピードウェイの名物、1.5kmのメインストレートがタイヤを冷やしてしまう可能性があるというのだ。そこで鍵になるのは、最終コーナーまでにどれだけタイヤに熱を蓄え、ストレートでの“温度の下がり幅”を減らせるかだろう。

 タイヤのウォームアップに関してはドライバーたちがさまざまなテクニックを駆使してタイヤに熱を入れているが、石浦いわく、富士にはタイヤを温める「3ヵ所のポイントがある」という。

「全体的に富士スピードウェイは右コーナーが多いため、荷重がかかる左側のタイヤは熱が入りやすいです。右側を温めるためにはコカ・コーラコーナー、アドバンコーナー(ヘアピン)、GRスープラコーナーの3ヵ所がポイントですね。あと、ウォームアップはドライバーのテクニックに加えて、チームが持っているセッティングの特性で得意、不得意が多少あると思います」

 そして、タイヤウォーマーの使用についてもチームの運用によって差が大きくなる可能性があると話すのは山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)だ。

「タイヤウォーマーの知識とその使用方法でオイシイところというのは、ふだん使っているわけではないので、意外とみんな分かっているようで分かっていないと思います。ですから、そのノウハウをいち早く引き出せたチームとドライバーが結果として速さを発揮することになると思います」と山本。

 タイヤウォーマーでじっくり温めるのがよいのか、それとも直前に急激に温めた方がいいのか。はたまた、外気温との差で何度に温めるのがよいのか。タイミングに温度管理など、チームの運用の仕方でタイヤのパフォーマンスが大きく変わる可能性が考えられる。

 どのドライバー、どのチームがタイヤウォーマーを使用したウォームアップの最適解をライバルより早く見つけ出すかが、“極寒の富士”を戦う上でのひとつのテーマになりそうだ。

タイヤウォーマーを使用することとなったスーパーフォーミュラだが、富士名物1.5kmのロングストレートが厄介だ。
タイヤウォーマーを使用することとなったスーパーフォーミュラだが、富士名物1.5kmのロングストレートが厄介だ。

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