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投稿日: 2020.12.19 19:16
更新日: 2020.12.19 19:25

最終戦で絶好調の野尻智紀「ふたりに注目が集まって楽な立場」。虎視眈々とタイトルを狙う

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スーパーフォーミュラ | 最終戦で絶好調の野尻智紀「ふたりに注目が集まって楽な立場」。虎視眈々とタイトルを狙う

 チャンピオンを争う平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)と山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が同ポイントで迎える2020年全日本スーパーフォーミュラ選手権最終戦となる第7戦富士。優勝すればチャンピオンが決まる平川、山本のふたりだが、タイトル争いでもうひとり忘れてはいけないのがランキング3位の野尻智紀(TEAM MUGEN)だ。

「(タイトルは)獲りたいですけどね。もられるならほしいとは思います」と、土曜の練習走行前、逆転タイトルに向けての抱負を語る野尻。

「今年ここまでのシーズンを振り返ると、正直、もう少しポイントを獲れたかなと思うところもあります。でもそれも含めてそれぞれのレースで僕たちの力を発揮してきたと思っている。その結果としてよく言えばタイトル争いに加われているし、悪く言えば条件付きという状況です。なので、チャンピオン争いはあまり深くは考えていなくて、いつものスタイルを変えるつもりはないですし、まずは今週末のレースに勝てればいいなと思っています。それに(ランキングトップのふたり中心で)僕はあまり注目されていないでしょうし(苦笑)」

 平川にも似た脱力感で、いい意味でリラックスしたいつもの調子で話す野尻。

 野尻の今季を振り返ると、序盤はやや苦戦の様相を見せていたものの、第4戦オートポリスでポール・トゥ・ウインを遂げ、一気にタイトル争いへ名乗りを上げてきた。第5、6戦はチームも野尻自身も得意とする鈴鹿が舞台で大量ポイントを稼ぐチャンスだった。

 しかし、第5戦は予選で2番手を獲得するものの、レース直前のレコノサンスラップでトラブルからマシンを停め、最後尾スタートから追い上げるも7位入賞。続く第6戦は予選ではタイヤウォーマーを早く装着しすぎてタイミングを逃し、まさかの18番手。決勝では追い上げて5位入賞を果たしたが、鈴鹿の2戦ではトラブルや戦略ミスのような形で野尻の速さを最大限に活かすことができなかった。

「第6戦の予選はタイヤが冷え過ぎて、ピットを出た瞬間に『ヤバイな』と思いました。でもその後の決勝ではそれなりにリカバーできていたと思います。その時の失敗もチームだけでなく、ドライバーも気づくべきでした。チーム全体で問題をちゃんと共有して富士にきているので、今回は大丈夫だと思います」と、前戦を反省しつつ、最終戦への準備は万端のようだ。

 一方で今回の富士決戦は2週間前の鈴鹿とは状況が異なり、気温、路面温度ともにひと桁とかなりの寒冷コンディションとなっている。タイヤウォーマーを使ってもアウトラップで温度をキープするのは難しく、その使い方が結果に影響を及ぼしそうだ。

「富士はどうしてもフロントタイヤが冷えやすいので、うまく1周を通して高いパフォーマンスを出せるようにしていかないといけない。タイヤウォーマーを使用している分、幅は広がっていますが、しっかりとコンディションに合わせ込まないとそれがタイム差になって現れると思います」と野尻。

さらに、レースでの戦い方も「富士は鈴鹿ほど簡単には(前車を)抜けない」と野尻は言う。

「決勝で言えば富士は抜きやすいとみなさん思っているかもしれませんが、そうはいかない。鈴鹿はシケインで背後に付きやすいですが、富士はどうしてもセクター3で離されやすい。仮にその状態で最終コーナーの立ち上がりからOTS(オーバーテイクシステム)を使用しても、メインストレートでやっと前を捉えて、スリップストリームが効いてきたなというぐらいのタイミングで1コーナーを迎えてしまう。富士だからこそ抜けない可能性は十分にあります。つまりやっぱり予選が大事ということになります」と、決勝での難しさを話す。

 決勝ではストレートスピードが髙いほど前のマシンをオーバーテイクしやすいが、直線重視だとダウンフォースが不足して予選での1周のタイムに影響してしまう。日曜のワンデー開催でセットアップを変更するのは時間的にもリスクが高く、予選重視か決勝重視か、悩ましいところだ。

 とはいえ、今回最終戦の野尻の土曜日は好調そのものだった。午前中に行われた専有走行で5番手(1分21秒720)、午後に行われたフリー走行では1日を通しての最速タイムとなる1分20秒708を叩き出した。

「クルマのフィーリングは悪くないです。午前中の時点から早めにロングのタイム計測に切り替えることもできましたしね。自分のレーススタイルを変えるつもりはないですし、少なくとも予選でしっかりとポイントを獲って、決勝も優勝しないと(タイトル獲得の)チャンスはないので頑張ります。でもトップのふたりに比べたら誰かを意識したりすることもないので楽な立場だと思いますよ。ふたりに注目が集まるなか、さくっと優勝してタイトルを獲れるのを狙っています」

 野尻らしい、したたかな戦略。2020年スーパーフォーミュラのチャンピオンの称号をかけた戦いで平川と山本に注目が集まるなか、失うものがないチャレンジャーの野尻が虎視淡々とその座を狙っている。

2020年スーパーフォーミュラ第7戦富士 野尻智紀(TEAM MUGEN)
2020年スーパーフォーミュラ第7戦富士 野尻智紀(TEAM MUGEN)


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