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投稿日: 2021.04.02 20:22
更新日: 2021.04.02 21:26

スーパーフォーミュラ、今季J SPORTSの実況を兼任するピエール北川さんに聞く『実況の裏事情』と『個人的な見どころ』

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スーパーフォーミュラ | スーパーフォーミュラ、今季J SPORTSの実況を兼任するピエール北川さんに聞く『実況の裏事情』と『個人的な見どころ』

 いよいよ4月3~4日に静岡県の富士スピードウェイで開幕を迎える2021年の全日本スーパーフォーミュラ選手権。今シーズンもスポーツ専門チャンネルのJ SPORTSでは、スーパーフォーミュラ全7戦の予選と決勝をお届けする。今年は2020年までの中継と異なり、レースファンにはご存知のピエール北川さんが場内実況とともにテレビの中継を兼任することになった。そのピエール北川さんに開幕戦の前日、実況への意気込みと今季のスーパーフォーミュラの魅力について聞いた。

☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

──いよいよ2021年のスーパーフォーミュラが今週末に開催されますが、まずはピエール北川さんの個人的な見どころはどこにあるのか、教えて頂けますでしょうか。

ピエール北川:今年のスーパーフォーミュラは、昨年の終盤戦から兆候はあったのですが、やっぱり若手の台頭が見どころですね。特に、唯一昨年2勝を挙げた坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)や、その坪井選手のチームメイトとなる阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)、それから福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)や大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)などといった2000年代くらいに生まれた世代が、いよいよ主役になっていくのかなと思います。そこが今年はさらに盛り上がってくれればいいなというのがあります。

──F1でも今年、角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)選手がデビューして、先日の開幕戦から9位入賞と活躍していますが、角田選手も2000年生まれ。いわゆる『ミレニアム世代』前後の生まれのドライバーたちが国内でも今年、活躍が期待されますね。

ピエール北川:そうなんです。今回はサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)が参戦できていないですが、彼も1999年生まれです。坪井選手が1995年ですが、宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)、阪口選手、大湯選手が1999年生まれ。角田選手が2000年生まれで、そう考えると今がノリノリの世代になりますね。それぞれカート時代、そしてジュニアフォーミュラ時代もタイトルを争った仲でもあります。その世代が、やっと日本のトップフォーミュラに上がってきたという意味では、スーパーフォーミュラではほぼルーキーになるけれど、彼らの世代の化学反応を期待したいです。

──その若手世代が現在のメーカーを代表する山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)、平川亮(carenex TEAM IMPUL)といった実績豊富なドライバーとどのような戦いを見せるのかは、本当に楽しみです。

ピエール北川:若手が活躍すると、ベテランたちも、今までは後輩だと思っていた世代が『なんか後ろから突っついてくるよ』というような感じで、尻に火がついていきますよね。これはスポーツの世界はどこでもそうですが、だんだん世代が変わって新陳代謝をしてくると、必ずニューヒーローというのが誕生します。それを目の当たりにできる瞬間が今年見ることができるかもしれません。今年は新型コロナウイルスの影響で外国人ドライバーの参戦が難しいので、国内でステップアップしてきたドライバーが主役になりますね。

──今年、ピエール北川さんは場内放送とテレビ中継の実況と両方を担当することになりますが、どのような違いがあるのでしょうか。

ピエール北川:物理的な部分でもいろいろと違いがあります。正直、場内とテレビ両方のお客さんを満足させるのは簡単なことでないです。場内放送では、クルマの音で実況音声がかき消されることが結構あります。常々その環境やお客さんの立場で放送しているので、僕は結構、繰り返して物事を伝えています。たとえば、『カーナンバー1番の山本尚貴がカーナンバー37番の宮田莉朋を抜いた~!』と言ったとするじゃないですか、テレビを見ている人は状況が分かっているので一度実況をすればいいのですが、場内だとその状況を見ていない人、マシンの音で実況を聞き逃した人がいるかもしれない。ですので、『カーナンバー1番の山本尚貴がカーナンバー37番の宮田莉朋を抜いた~!』と言った後に、『カーナンバー1番の山本尚貴が宮田をオーバーテイク』のような感じで念押しをしたりします。

場内実況とテレビ向け実況の違いを語ってくれたピエール北川さん
場内実況とテレビ向け実況の違いを語ってくれたピエール北川さん

──なるほどです。それは気づきませんでした。たしかに、サーキット観戦の宿命として、目の前を走るマシンの迫力は体感できるけど、見えないコーナーでの出来事は分かりづらいという難点があります。

ピエール北川:そうなんです。そこで起こった出来事を繰り返して言うと、場内のお客さんの前をマシンが通過した後、静かになったときに前の言葉、後の言葉を拾いやすくなります。場内だと実はそういうテクニックがありますが、テレビでその実況をすると『2回も3回も言わなくていいよ』というツッコミが入ってしまいます(苦笑)。厳密に言うと場内とテレビ用で実況を分けたいのですが、今年は場内実況とテレビ実況が同じなので、あまりこだわらずに『現場の臨場感』というところで多めに見て頂きたいですね。ですので『現場の熱』『現場の興奮感』をテレビで伝えることができればいいなと思います。

──兼任には難しい面もありますが、それを踏まえても、ピエール北川さんがサーキットで独自に取材した情報やスーパーGTを含めたドライバー、チームの情報量の多さは視聴者にとっては魅力です。スーパーフォーミュラは同じチームでドライバーの区別が難しいですし、最近はヘイローでヘルメットの識別も難しくなりました。レース戦略、バトルも繊細です。スーパーフォーミュラには目の肥えたレースファンが多くて、そのファンに応えるためには実況にも多くのスキルが求められると思います。

ピエール北川:そのあたりは事前の情報収集が大事だと思います。そして今回の開幕戦は元チャンピオンで、昨年スーパーフォーミュラを引退された石浦宏明さんが解説を担当してくださります。石浦さんは昨年まで『SF19』をドライブした経験を持っているわけですので、乗った経験について彼以上に話せる方はいないですよ。

──石浦さんは理詰めで考えるタイプで、エンジニア的な視点もある方なので、解説はとても楽しみですね。

ピエール北川:そういう意味でも、ほぼ現役に近いような選手が開幕戦の解説を務めてくれるので、僕にとってもワクワクです。本当に、いま現場で何が起きているかというのが、一番手に取るようにわかる人です。たとえば、タイヤひとつとっても、『このあたりからグリップが落ちてきますよ』というのが我々はわからないじゃないですか。僕らはラップタイムモニターから状況を推測するしかない。そういったことを経験者ならではの皮膚感覚や、クルマのちょっとした動きを見て『そろそろタイヤがきていますね』ということを解説して欲しいですし、僕も石浦選手がそういうことを言えるような実況をしたいですね。決勝レースは忙しいですけれど、放送席では根掘り葉掘り聞いてみようと思います(笑)。

──ピエール北川さんの実況で昨年も印象的なのが、苦労してきたドライバーの努力が実を結んだとき、実況でピエール北川さんが感極まって言葉に詰まったりするのを聞くと、とても心が温かくなります。実況の方が、そういった感情を出すのがいいのかどうかはわかり兼ねるのですが……。

ピエール北川:実況に感情を入れるのが良いか悪いか、と言うことは置いておいて、僕のスタイルは淡々と実況するスタイルではありません。長年見てきたドライバーが結果を出せば、それは感極まりますよ(笑)。そういう意味では、昨年のスーパーフォーミュラ最終戦でも、坪井選手が優勝したときに思わず感情で『これからは坪井の時代がくるかもしれない』と口走ってしまいました。そう考えると、そんな成長をしているドライバーがスーパーフォーミュラには多くいるので、非常に楽しみにしています。

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 サーキットでその声を聞いた方ならお分かりのとおり、現在のレースでなくてはならない存在でもあるピエール北川氏の実況。その声がサーキットだけでなく、今年J SPORTSの実況で、しかも、開幕戦では予選の解説を本山哲さん、決勝の解説を石浦宏明さんが担当するというから、ピエール北川さんとどのような掛け合いになるのか、スーパーフォーミュラファンにとっては嬉しい限りだ。

 今週末の放送を聞くには、下記のリンクからJ SPORTSに加入して、ピエール北川さんとともにスーパーフォーミュラを楽しんでみよう。

●J SPORTS スーパーフォーミュラ 番組特設サイト

<<プロフィール>>
ピエール北川(ぴえーる きたがわ)

1970年6月2日生まれ。愛知県在住。モータースポーツ実況やモータースポーツレポーターとして活躍し、現在ではスーパーGTやスーパーフォーミュラなどの国内トップカテゴリーのサーキット場内実況を担当している。ピエール北川さんのInstagramアカウントはこちら。

インタビューに応じてくれたピエール北川さん
インタビューに応じてくれたピエール北川さん


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