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投稿日: 2022.06.21 11:44
更新日: 2022.06.21 11:45

赤寅号が“8気筒排気音”を試す。ホンダ佐伯氏の「熱いリクエスト」でより高音に/SF次世代車両開発テスト

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スーパーフォーミュラ | 赤寅号が“8気筒排気音”を試す。ホンダ佐伯氏の「熱いリクエスト」でより高音に/SF次世代車両開発テスト

 2022年の全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦が行われたスポーツランドSUGOで、次世代の車両開発のためのテストがスタート。2台のSF19テスト車両を用い、話題を呼んでいる“排気音テスト”をはじめ、初日からさまざまなテストメニューが実施された。

 レースウイーク中は気温30度に達するほどの暑さとなったが、テスト初日の6月20日(月)も、それを凌ぐほどの強い日差しが照りつけた。

 この日は、10時~12時、14~16時の2セッションを実施。途中、小動物がコースに侵入したため、午前と午後それぞれで1度ずつセッション中断となる場面があったが、2台ともクラッシュなくプログラムをこなしていった。

 午前中には2台追従でのデータ収集を行った。セッションの中盤と終盤に2台が揃ってコースインし、1周ごとに前後のポジションを入れ替えて、スポーツランドSUGOでの接近での後続車に対する影響具合を確認。午後のセッションでは主にタイヤテストを中心にメニューを消化していた。

スポーツランドSUGOで、空力効果確認のため追従走行する2台のSF19開発テスト車両
スポーツランドSUGOで、空力効果確認のため追従走行する2台のSF19開発テスト車両

■排気音テストは「“できた”ということに、一番大きな意味がある」

 そして、かねてより話題となっていた排気音のテストが実施された。今回、TCDが開発した排気管が石浦宏明のドライブする赤寅号に装着された。通常のものとは異なり、マシン後方のものに加えて、エンジンルームの中央からやや後方部分に1本追加されている。これにより、直列4気筒のエンジンで、8気筒相当の音を出そうというものだ。

 これには、テストに関係している関係者らも興味津々で、ピットレーンのみならず、さまざまなポイントに動いて、エンジンサウンドを確認していた

 エンジンをかけた瞬間から、いつものものとは違うということは分かるほどで、走行中も全開で走っている時は、塚越広大の白寅号と比べて高い音がしているという印象を受けた。ただ、そこまで劇的に大きな差があるというほどでもなかった。

 ただ、セッション終盤に微調整を行い、走行を始めると、それまでよりも明らかに高い音を響かせていた。

 初めての試みとなる直列4気筒ターボエンジンで8気筒の音を再現するというものだったが、SF NEXT50テクニカルアドバイザーの永井洋治氏は、一定の成果があったと笑顔をみせていた。

「いろいろな捉え方はありますけど、まずは“できた”ということに、一番大きな意味があると思います。実際に感度がありましたので、今後チューニングすることで、ポテンシャルをまだまだ引き出せるのかなと。すごく良い試験ができたと思います」

永井洋治氏と話す開発ドライバーの塚越広大
永井洋治氏と話す開発ドライバーの塚越広大

 現場で排気音テストの指揮をとったTCDの佐々木孝博氏も「私はベンチでの音も聞いていますし、シミュレーションでのデータも見ていますので、事前の先入が入ってしまいますけど、その辺の領域がしっかりと再現できているなと思いました」とコメントした。

 テスト終盤にはホンダの佐伯昌浩氏からの提案を参考に、ブースト圧を下げた状態での走行を実施。残り15分を切ったところで赤寅号がコースインすると、それまでとは明らかに違う甲高いサウンドが響き渡った。

「ホンダの佐伯さんから熱いリクエストがありましたので、ウェイストゲート側から出す排ガス量を増やして走りました。やはり、そこで出る音域は高くなりました。これで『良い音を作るためには、こういう手段があるよね』というのは分かりましたし、ホンダさんとも協力をしながら、音作りをしていけたらいいなと思います。最終的には共通部品を使って『良い音で走れる』というのが、いいのかなと思います」

 今回は8気筒相当の排気音を再現するテストということで、ファンも注目しており、この日は平日にも関わらずサーキットに足を運んで、テストの様子を見守る人の姿も見られた。ただ、フォーミュラ・ニッポン時代のFN06やFN09で響き渡っていたサウンドには、少し程遠い印象。SNSを見てもさまざまな感想が書かれていたが、佐々木氏は現行ルールで決まっている直列4気筒エンジンを使って“今できること”をテストしたという。

「音って、結局は主観評価なので、個人がどう感じるかだと思います。だから『“良い音”ってどういう定義なのか?』というと、すごく難しいです。ただ、実際に今の直列4気筒で出来ること。かつシミュレーションで再現してモノが作れること。それで今できる最適なことをやったと思います」

 これについては、永井氏も次のような見解を示す。

「(良い音というと)例えば、SWCで走っていたV10の音とか、F1のV12とか……。みなさんのイメージもそこだと思うんですよね。さすがにダウンサイジングでは、そこまではいかないです。GTとかフォーミュラのV8の音というのが、ダウンサイジングで狙えるところかなと思います」

「佐々木さんが言うように(目標を)どこに置くかという絶対値はすごく難しいと思うんですけど……みんなが思っている“昔の音”に近づけるというイメージですね」

「次回はホンダさんも(テストを)やるかもしれないということで、これからいろいろなことができる可能性が広がったと思います」

 次回は第6戦が終了した後の7月18日・19日に富士スピードウェイで開発テストが行われるが、TCD側は排気音テストをするかどうかについては、現時点で決まっていない様子。佐々木氏もまだ(テストが)終わったばかりなので、まずはしっかりと分析をして検討していきたいなと思っています。今回いろんな場所で、音を取っていますので、それをしっかりと解析したいです」と語った。

 スーパーフォーミュラの開発テストは21日も引き続きスポーツランドSUGOで実施。2日目は排気音のテストは行わず、タイヤテストに加えて、カーボンニュートラル燃料のテストも予定されている。

トヨタ/TCDエンジン搭載の赤寅号をステアリングを握った石浦宏明
トヨタ/TCDエンジン搭載の赤寅号をステアリングを握った石浦宏明
タイヤの面でも新たな素材の使用など、次世代に向けたテストが進められている


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