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投稿日: 2022.07.18 19:41
更新日: 2022.07.20 12:36

F1のノウハウも。ホンダエンジンの白寅号が2種類の排気管で“音の違い”を確認/次世代車両開発テスト

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スーパーフォーミュラ | F1のノウハウも。ホンダエンジンの白寅号が2種類の排気管で“音の違い”を確認/次世代車両開発テスト

 7月18日、全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦から一夜明けた富士スピードウェイで、次世代車両の開発テストがスタート。前回のスポーツランドSUGOではTCDが“赤寅号”で排気音テストを行ったが、今回はHRCが新しい排気パイプを用意し、テストに臨んだ。

 この日は祝日ということもあり、グランドスタンドをはじめ、各コーナーでテストの様子を見にきたというファンの姿も多かった。そんな中で午前10時から始まったテストだが、塚越広大が担当する白寅号にはHRCが開発した排気パイプが装着され、最初の1~2周はHRCのスタッフがサインガードに出てサウンドを確認する姿が見られた。

 基本的には、前回のテストでTCDが製作したものとコンセプトは同じなのだが、TCD側が設計したものは排気管がテールパイプとウェイストゲートの2カ所あったのに対して、HRC側のものは、1本のみ。その代わり、エンジンルーム内を縫うように長いパイプが配置されていた。

 これについて今回開発に携わったHRC四輪レース開発部 開発室 第1ブロック チーフエンジニアの鵜篭(うごもり)由之氏は「そんなにトヨタさんとは考え方は大きく変わっていないと思います。基本的にはテールパイプにウェイストゲートから出すエアをドッキングし、脈動をずらすような形にして、8気筒の音に近づけることを試しました。まずはシミュレーションで計算をして、使用する排気管の径と長さを決めて、設計に移りました」と説明してくれた。

 ただ、排気管の長さにはこだわりを見せており、今回は3種類を製作。さらに検証を重ねていった結果、そのうち長い方の2種類をテストで導入することになった。

 午前中には短いもの(3種類の中では中間の長さ)を使用したのだが、午後には一番長いバージョンに変更。コーナーによっては、甲高いとまではいかなかったが、4気筒とは思えないほど軽快なサウンドが聴こえてきた。

「本来は長い排気管でいきたかったんですけど、(スペース的に)かなり無理をしているので、当初は短い方でいこうと思っていました。ただ、佐伯さんが『せっかくだから、やり切ろう!』ということで、長いものを追加手配して、実は昨日(サーキットに)到着して、今日初めて装着しました」と鵜篭氏。確かに午前のセッションと比べても、高い音が出ている印象を受けた。

報道陣に公開された、ホンダエンジン搭載、通称“白寅号”のエンジンルーム
報道陣に公開された、ホンダエンジン搭載、通称“白寅号”のエンジンルーム
7月18日、富士スピードウェイで行われた次世代車両開発テストの様子
7月18日、富士スピードウェイで行われた次世代車両開発テストの様子

 1日目の全セッション終了後には、使用した排気管がメディアに公開され、TCDの佐々木孝博氏も排気管の形状などを興味深く見ていた。

 特に午後のセッションで使われた一番長いバージョンは、エンジンルーム内を所狭しと排気管が通っているレイアウトになっているため、当然“熱害”の懸念もあった。その対策として、F1で使用されている断熱材と同じものを採用。こういったところでもF1で培ったノウハウが活かされていおり、鵜篭氏も「各所でF1でやってきたことを取り入れているので、(F1でやってきたことは)活かせていると思います」と語っていた。

 余談ではあるが、断熱材にこだわった分、それなりのコストはかかっている模様。囲み取材時には、佐伯昌浩LPLが「私が『これ、いくらかかったの?』と言っても……誰も答えてくれないんですよ」と苦笑いすると、鵜篭氏が「多分、佐伯さんのところには高い請求がいくと思います(笑)」というやりとりもあった。

 今回のテストを振り返り、鵜篭氏は「開発側で言うと、シミュレーション上で計算をして、モノを作り、実際に走ってみて音が変わっていました。シミュレーションの結果が立証されたので、そこは良かったのかなと思います。実際に導入していくかについては、今後JRPのご判断になると思うので、まずは『こういうことができます』ということが確認できました」と、手応えは感じていた様子。

 佐伯LPLも「今回はシミュレーション結果が、そのままモノ作りをした時に、合っているかどうかという検証も兼ねているので、そこは計算通りかなと言うのは確認できました」と語った。

 また通常のテストメニューとして、今回もダウンフォースレベルの確認作業が1日目午前のセッションに実施。そのほかにもB-compのボディカウルのテストやタイヤテストも順調に進められた。なお、今回に関してはカーボンニュートラル燃料を使った走行は予定されていないという。

 2日目となる19日も同様のメニューになる予定だが、雨の予報も出ており、これまで進められていなかったウエットタイヤのテストも実施できそうだ。

7月18日、富士スピードウェイで行われた次世代車両開発テスト
7月18日、富士スピードウェイで行われた次世代車両開発テスト
石浦宏明がテストドライバーを務めるトヨタ/TCDエンジン搭載車両“赤寅号”
石浦宏明がテストドライバーを務めるトヨタ/TCDエンジン搭載車両“赤寅号”


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