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投稿日: 2024.05.07 17:10
更新日: 2024.05.07 14:40

【GT500技術レビュー/ホンダ編】シビックだから採用できた“非対称”なチャレンジ精神


スーパーGT | 【GT500技術レビュー/ホンダ編】シビックだから採用できた“非対称”なチャレンジ精神

 今季2024年、ホンダが新たに『シビック・タイプR-GT』を投入。ニッサンはZであることは変わらずも、ベースがロングノーズの“バージョン・ニスモ”に変わった。2023年王者のトヨタGRスープラにベースモデルの変更はないが、空力開発が解禁となり「実質的に新車」だという。そして、各車の内燃機関は最先端へのビッグステップを果たし、未曾有の領域へと達した。

 5月2日発売のauto sport臨時増刊『2024 スーパーGT公式ガイドブック』では、GT500車両開発の裏側を解説。ここでは、シビック・タイプR-GTの一部を抜粋してお届けする。

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 NSX CONCEPT-GT(2014~2016年=MR)、NSX-GT(2017~2019年=MR、2020~2021年=FR)、NSX-GT Type S(2022~2023年=FR)と、ホンダ(現在の開発活動の主体はHRC)は10シーズンにわたって走り続けたNSXに別れを告げ、2024年シーズンからはシビック・タイプR-GT(FR)を走らせる。

 ベース車の変更にともない、ボディ形式は2ドアクーペからハッチバックを持つ4枚ドア車に変わる。サイドから見るとシルエットの違いは歴然としており、リヤ側のボリュームが大きい。

 モノコックをはじめ多くのコンポーネントが共通部品に指定されているため、全面刷新というわけにはもちろんいかない。では中身は変化なしかというとそんなことはなく、外観以上に大きく変わっている。

 2014年にNRE(ニッポン・レース・エンジン)の規定が導入されて以来、GT500各車は2リットル直列4気筒ターボエンジンを縦置きに搭載する。冷却システムは中央にインタークーラーを置き、ラジエーターを左右に振り分けて搭載するのが一般的だ。ところがシビック・タイプR-GTはラジエーターを半減させて左側1基に集約し、空いた空間にインタークーラーを配置する非対称レイアウトとした。

「一番大きくチャレンジした部分です」と、GTプロジェクトリーダーを務めエンジン開発を率いる佐伯昌浩氏は説明する。「搭載位置は前になるものの、真ん中の上のほうにあったインタークーラーを下に持っていき、水が入ったラジエターをひとつ減らしました。低重心化と軽量化を図り、重心位置を車両中心側にもっていくのが狙いです。エンジンの冷却効率は下がるのですが、熱効率を上げていくNRE開発の方向とは合います」

 シリンダーでの爆発的な燃焼によるエネルギーは冷却水との温度差が大きいほど、出力に変換されずに逃げてしまう。冷却損失低減の観点からは、できるだけ高い水温で運転したい。ホンダはそこを攻めたというわけだ。

 高水温にすると大気圧では100℃で沸騰してしまうので、水圧を上げてキャビテーション(泡の発生)を抑えることになる。ラジエターコアは共通スペックであり、耐圧性能を上げたラジエターを適用するわけにはいかない。共通コアが耐えられる範囲で水圧を上げ、高水温化したのが実状。インタークーラーの位置が左ではなく右なのは、このレイアウトのほうが「圧力損失が少ない」からだそう。

 NSXでは非対称レイアウトは採用できなかった。なぜなら上面視した際、フロントバンパー角が切り落とされた形状になっていたからで、物理的に不可能だった。シビックはスクエアな形状のためスペースに余裕ができた。熱交換器の非対称レイアウトを採用したシャシー側の背景について、車両開発を担う徃西友宏氏は次のように説明する。

「ラジエターは冷却要件次第で小さくできるのですが、インタークーラーは最大容積で決められているし、厚みも決まっているので縦横比を変えるくらいしかできません」

「シビックが手元に来てラジエターを片側に寄せることになり、空き地をどうするかとなったときに、インタークーラーがジャストサイズで入ったということです。担当者が早い段階で見いだしてくれたので、このレイアウトを成立させる前提で開発日程を組みました」

【GT500技術レビュー/ホンダ編】シビックだから採用できた“非対称”なチャレンジ精神
2023年限りで退いたNSX-GTに代わって登場したシビック・タイプR-GT

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