「明日このタイヤ使うんですかねぇ?」
事前の天気予報に反し、一時雨は舞ったものの、終始ドライコンディションで終わったスーパーGT第4戦SUGOの予選日。このセリフは、ポールポジションを獲得したVivaC 86 MCの松井孝允と、前日の金曜日にスリックタイヤを見ながら出たセリフだったが、天気予報とは異なるコンディションとなった予選での圧巻の走りは見事としか言うほかない。このSUGOはJAF-GT車両、そしてマザーシャシーが大いに得意とするコースで、レースとなれば展開は変わるだろうが、VivaC 86 MCの予選までの速さにはライバルたちも「ここは速すぎる」と半ばあきらめ顔だ。
■2ヶ月間のインターバルが実を結んだ2台
一方で、興味深いのは2番手、3番手のメンツ。2番手のUPGARAGE BANDOH 86は予選までの速さはこれまでも発揮しており、VivaC 86 MC同様に得意とするコースだが、ぜひご注目いただきたいのはQ1で2番手タイムをマークした川端伸太朗の走りだ。今季ここまで、初めてのGT300で苦戦をしてきたが、「やっとまともに走れるようになったかなというのが本音」だという。
「(第3戦から第4戦までの2カ月の)インターバルの間、テストもさんざんしたし、シミュレーターにも乗った。その結果が実を結んだかなと思います。今までなかなかGT300に合わせ込めなかったですから」と川端。
「ただ、そのなかでもっと詰められたというのがあった。これに満足せず、もっと突き詰めていきたいと思います。明日の決勝は大変なレースだと思いますが、動じず、落ち着いていきたいと思います」
この川端の走りには、チームメイトの中山友貴も「本当によくやってくれた。一生懸命やってくれているし。その成果を本番で出せているのがえらいですよね」と褒めた。そして、これまでUPGARAGE BANDOH 86を育て上げてきた中山にとって、やはり欲しいのは勝利だ。
「やっぱり勝ちたいです。(VivaC 86 MCのエンジニアを務める)土屋武士さんの考えも、3年間戦ってきて僕が知っている部分もありますし、向こうのレース巧者な部分に対してどう戦ったらいいのかはみんなと打ち合わせしています。明日は僕がスタートを担当して、ブッチ切って川端に楽をさせて勝ちたいです」
また、3番手のSYNTIUM LMcorsa RC F GT3は、ある意味“驚き”の順位となった。レクサスRC F GT3のデビュー以来、辛酸を舐めてきたLM corsaは、新型RC F GT3のデビュー後も、JMS P.MU LMcorsa RC F GT3は勝利を飾ってきたものの、SYNTIUM LMcorsa RC F GT3はなかなか上位に食い込めなかった。
今回、急にポジションを上げてきた理由について吉本大樹に聞くと、「インターバルの間のテストがすべて。クルマとしてはなにも変わってない」という。
「ヨコハマがすごく頑張ってくれて、テストでいろいろ試した結果、差を埋めることができています。グリップが上がったとか、そういうことではなく、クルマにマッチし出したということです」
実は吉本によれば、意外にもレクサスRC F GT3は「SUGOに合っている」クルマだという。コーナーが得意で、これまではそのコーナーの得意さを活かせるタイヤではなかったが、今回タイヤ開発が進んだことで、いい走りができるようになったということだ。ちなみにこれは、2年目を迎えた新型GT3カーたちが今季ポテンシャルを上げていることとも共通する。
ちなみに、4番手につけたSUBARU BRZ R&D SPORTについては、少々事情が違うようだ。「テストは全部苦戦しているんですよ。でも、本番になると意外と走る。今回も公式練習まではひどくて、予選になってバネと、ウイングを変えていかせたら良くなった」という。JAF-GTのなかでもSUBARU BRZ R&D SPORTはオリジナルな部分が大きいが、“本番に良くなる”不思議な特性は面白いところだ。