8月26〜27日に鈴鹿サーキットで開催されたスーパーGT第6戦鈴鹿1000kmで、aprから参戦する30号車TOYOTA PRIUS apr GTは、永井宏明と佐々木孝太のコンビで予選14番手からスタートし、決勝は24位でフィニッシュしたが、今回じつはこの30号車TOYOTA PRIUS apr GTは、代名詞でもあるハイブリッドシステムを搭載していなかった。これはなぜだったのだろうか。
JAF-GT規定車両であるTOYOTA PRIUS apr GTは、今季嵯峨宏紀/久保凛太郎の31号車と永井/佐々木組の30号車という2台が参戦しているが、2台は細かい違いがある。31号車がブリヂストン、30号車がヨコハマとタイヤも異なれば、ハイブリッドシステムにも違いがあり、蓄電装置が31号車がキャパシタ、30号車がリチウムイオンバッテリーと異なっている。
ただ、30号車は今回のレースから、ハイブリッドシステムが非搭載となっていた。レース直前の8月22日付けで出されたブルテンには、ハイブリッド非搭載の参加条件も発表されていたが、いったいなぜ非搭載になったのだろうか。aprの金曽裕人チーム代表に聞くと、セーフティシステムのエラーが要因であると明かしてくれた。
TOYOTA PRIUS apr GTは、“走る実験室”としてさまざまなハイブリッドのトライをしながらスーパーGTを戦っているが、ハイブリッドにとって大敵なのは熱。とくに夏場のレースにおいて、熱の問題は大きなものであり、じつは30号車TOYOTA PRIUS apr GTは、ここ最近のレースや予選で毎戦ハイブリッドにセーフティシステムが働き、エラーが起きていたのだという。
このセーフティシステムは入念に開発されたもので、この機能のおかげで漏電や故障などの深刻なトラブルは起きていない。しかし、レースではエラーによってシステムが停止してしまっては、本来の性能を発揮できず、大きく遅れてしまう。セーフティを解除する選択肢もあると素人目には考えられそうだが、そう簡単に切れるものでもないのだとか。
そんな事情もあって30号車は今季まだポイント獲得ができていないが、今回の第6戦鈴鹿はチームをサポートするカローラ三重にとっては大事な地元レース。大応援団も訪れることから、数周でリタイアするわけにもいかない。そこで苦渋の決断として、鈴鹿でハイブリッドシステムを下ろすことを決めたというわけだ。
この申し出を受けたGTアソシエイションでは、トヨタ/TRDからの要請もあり、ハイブリッド非搭載を許可。ただし条件として、ブレーキング〜加速が多くハイブリッド車が有利な最終戦もてぎでもハイブリッドを積まずに戦うことが求められている。もともと第7戦タイはリチウムイオンが海外に持ち出せないため非搭載の予定だったが、これで最終戦まで、30号車TOYOTA PRIUS apr GTはハイブリッドを積まないまま戦うことになった。
30号車と31号車でシステムを分けていることからも分かるとおり、TOYOTA PRIUS apr GTはトヨタのハイブリッド開発の可能性を見出す役目も担っている。熱の問題は非常に難しく、チームとしても厳しい決断だったのは間違いないだろう。今後対策がなされるというが、こうした経験がトヨタの次の技術発展に繋がっていくはずだ。