いよいよスーパーGTの2017年シーズンも、最終戦ツインリンクもてぎを迎える。年々競争が激化するGT300クラスは、今季は4台にチャンピオンの可能性が残されている。タイトル争いの状況と、どんな展開になりそうなのかをまとめてみよう。
■大きなポイント差を築いた谷口/片岡組
2017年のGT300クラスは、例年のように高いアベレージでポイントを積み重ねたチームがタイトル争いに残ることになった。現在ランキング首位は開幕戦岡山で優勝を飾り、第5戦富士、第7戦タイでも表彰台を獲得しているグッドスマイル 初音ミク AMGの谷口信輝/片岡龍也組。取りこぼしも少なく、65ポイントを積み重ねた。
ランキング2位は、第2戦富士でレクサスRC F GT3に初勝利をプレゼントし、第7戦タイも戦略を的中させたJMS P.MU LMcorsa RC F GT3の中山雄一/坪井翔組で56ポイント。3位はポイント獲得が多い第6戦鈴鹿を制し、開幕戦岡山でも表彰台を獲得しているLEON CVSTOS AMGの黒澤治樹/蒲生尚弥組で52ポイント。4位は第5戦富士を制したARTA BMW M6 GT3の高木真一/ショーン・ウォーキンショー組で46ポイントとなっている。タイトルの可能性を残すのはこの4台のみだ。
得点差を見てみると、谷口/片岡組は2位の中山/坪井組に対して9ポイントの差をつけている。3位の黒澤/蒲生組とは13ポイント。一方、4位の高木/ウォーキンショー組は19ポイント離れており、優勝が最低条件。状況を考えるとかなり苦しい。
その意味では、2位の中山/坪井組も4位+ポールポジション以上が最低限。3位の黒澤/蒲生組も2位以上が最低限と、ポイントとしては谷口/片岡組が非常に優位なように思われる。
■追う側は「条件は厳しい。ベストを尽くすのみ」
こうした状況で迎える最終戦もてぎだが、まずは車両面で見てみると、4台ともにFIA-GT3車両だ。メルセデスAMG GT3はもてぎは得意なのでは……と思われるファンの方も多いかもしれないが、メルセデスがもてぎを得意としていたのは先代のSLS AMG GT3の時代の話。現在のAMG GT3はコーナリング重視であり、必ずしも得意とは言えない。3種類の車両のなかでは、レクサスRC F GT3、BMW M6 GT3の方がどちらかといえばもてぎ向きだろう。
一方、ご注目頂きたいのはタイヤとチーム力だ。グッドスマイル 初音ミク AMGはヨコハマ、それ以外の3台はいずれもブリヂストンだ。グッドスマイル 初音ミク AMGは今季向けに開発してきたタイヤが非常にパフォーマンスが高く、「どのコースに行っても速い」というのが全般的な評価。それに加え、谷口/片岡が性能以上の能力を引き出す力(特に予選で)も高く評価されている。また、ふたりはタイトルがかかる大一番を何度も経験しているのも強みだろう。
逆に、中山/坪井組、黒澤/蒲生組が履くのはブリヂストン。こちらも全体的に非常にパフォーマンスが高く、特にブリヂストンはもてぎでは表彰台の獲得率が非常に高い。中山/坪井組は若さと速さ、これまで何度もタイトル争いに挑んでいる中山の経験が武器だ。
ただ中山に最終戦について聞くと「チーム力もついていますし、自信をもって戦いたいと思っています。今までもタイトル争いではランキング2位が2連続で続いていますし、いい位置にはいる。ただ9点差というのは大きいですね。勝たないといけないですし、優勝を狙うのと同じくらい厳しいですね。チャンピオン争いのことは考えずに、ベストを尽くしたいと思います」という。
また、黒澤/蒲生組も“ハマった”時のパフォーマンスは他の追随を許さないものがある。黒澤の高い安定度、そして蒲生の速さはもてぎでも大いに発揮される可能性が高いが、中山/坪井組と同様、王座獲得のための順位に届くのは、激戦のGT300では難しいチャレンジになるだろう。