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スーパーGT ニュース

投稿日: 2017.11.15 17:31
更新日: 2017.11.16 16:33

【柿元邦彦今日の一言】「レース界では一般社会とは違う生き様が正義である」

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スーパーGT | 【柿元邦彦今日の一言】「レース界では一般社会とは違う生き様が正義である」

 12月1日発売、柿元邦彦著『GT-R戦記』の一部抜粋連載その1。

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■どのチームも出し抜いて勝ちたい

 最近でこそ“総監督”という肩書の人をさまざまなチームで置くようになったが、2004年に我輩がニッサン系スーパーGTチーム総監督に就いた頃は、一般的ではなかった。従ってその役割については先例がなく、我輩なりに考えて「ニッサン系チームのどこかのチームがチャンピオンを獲ること」と定義した。そのためにどのように振る舞い、どういう仕事をすれば良いか考えながらやってきた。

 結果として、その任にあった2004~2015年の12年間で6回のチャンピオンのタイトルを獲った。我輩の力だけによるものではないのは承知の上で言うが、勝率5割はそれほど悪い結果ではない。

 我輩が接するチーム関係者は、若い頃からモータースポーツを目指してそれなりの成功を収めてきた人達である。競争心が人一倍旺盛で、ストレスフルで、スリリングな勝負の世界で生き抜いてきた人たちだから、それを取りまとめて良い結果が出るように導いていくのは容易なことではない。

 極端な表現をすれば、一般的な社会ではあまり見られないような生き様が正義の世界だから、先ずはそれに心からの敬意を払い、「柿元に言われりゃしょうがないか」と思われる信頼感を得るように心掛けた。もちろん実際にどこまで信頼感を得られていたかは別である。

 どのチームもドライバーも、他を出し抜いてでも勝ちたいと思っているのは当然である。そういうなかで、全体を見てチームによっては不利なことを指示する場合があるし、その指示に対し返事はイエスでも実際はそう振る舞わない、いわゆる面従腹背(めんじゅうふくはい)がないようにしなければならない。

 そのために日頃から我輩の言葉と態度に一貫性があるように努め、できるだけチームを分け隔てしないで、フェアに行動したつもりである。

 スーパーGTはチーム戦だからと、よくチームオーダーのことが話題になる。確かにウェイトハンディ制のなかでは1戦1戦の結果も大事だが、チャンピオンというタイトル獲得に最大の価値があるので、それを達成するためにチームオーダーというのはあり得るかもしれない。

 しかしそれがファンの目におかしく映ったのでは意味がない。要は各チーム、ドライバー、ファンが納得のいく形でなければならない。

 例えば、タイトルの行方が見え始めたラスト2戦くらいから、効果的な部品ができたけれど数に限りがある場合は、可能性の高いチームを優遇するとか、前を行くライバルを追いかけなければならない場合は、GT-Rチーム同士で遅いクルマが速いクルマをスムーズに抜かせ、逆にライバルに対しては正当な範囲でブロックするなど。

 順位の入れ替えも、逆に入れ替えなかった時に「入れ替えればタイトルが獲れたのに、何故やらなかったのか?」とファンを含めてお叱りを受けるようなケースでは入れ替える場合がある。

 要は事前に情勢分析をしっかりやって、タイトル獲得のための作戦を特に各監督が正しく共有することである。そしてレース中は阿吽の呼吸と目線でお互いの納得にいく行動をとる。そのためには、その時々で方針ややり方を変えるのではなく、どのチームにもフェアな常にぶれないやり方を長年にわたり踏襲し、関係者の信頼を得ておくことが大切である。


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