予選直前でのスコール、そして酷暑のなかでのレース……。最終的にこのレースではGAINER TANAX GT-Rが優勝を飾り、2018年モデルのニッサンGT-RニスモGT3が初優勝を遂げることになったが、映像では伝わりきらなかったかもしれないスーパーGT第4戦タイのGT300クラス上位陣の悲喜こもごもをお届けしよう。
■溜飲を下げたGAINER TANAX GT-Rの優勝。秘訣はタイヤとセットアップ
このタイで、2018年モデルのニッサンGT-RニスモGT3が初優勝を遂げた。今季はスーパーGTを中心にブランパンGTシリーズ・アジア、ブランパンGTシリーズにも参戦している18年モデルだが、これが世界的に見ても初優勝だ。
レース後の記者会見で、平中克幸が「今週末、公式練習の走り出しからクルマ、タイヤのマッチングがとても良かった」と語るとおり、GAINER TANAX GT-R、そして同じチームの10号車GAINER TANAX triple a GT-Rは好調だった。開幕前の岡山テストでは11号車がクラッシュしてしまったり、参加条件もあり思うようにスピードが伸びなかったりと苦しいデビューイヤーとなっていたが、チーム、そしてニッサン/ニスモにとっては“溜飲が下がる”結果だろう。
「今回は本当にタイヤが良かったです」というのは、GAINER TANAX GT-Rの福田洋介チーフエンジニア。
「このタイはターボ車が得意なコース。獲れるとしたらここじゃないかと思っていましたし、暑いなら暑い方がいいと思っていました。タイがいちばんこのクルマの“苦手な部分”が出ないコースなんですね。今回、11号車も10号車もタイヤの開発が進みバッチリでした」
「昨日のブースト圧のオーバーシュートで(10号車が)失格にならなければ、ワン・ツーも見えたかもしれませんね」
ただ、実は福田チーフエンジニアによれば、「ちょっと内容は言えませんが、じつはあと1周あったら危なかった」というトラブルもあったという。結果的には2位に入った31号車TOYOTA PRIUS apr GTに3秒以上のマージンがあったものの、TOYOTA PRIUS apr GTは後半猛追をみせており、決して余裕の勝利ではなかったというのだ。それだけに、“獲れるときに獲る”ことができたGAINER TANAX GT-Rにとっては、まさに“溜飲が下がる”結果だと言えるだろう。
「GT3はサーキットによって向き不向きが大きい。得意とするサーキットでしっかりと走れるタイヤ、クルマのセッティングをやってきたことが、今回の勝因だと思っています」と平中が言えば、「今回でシリーズランキングトップになったので、ふたりでチャンピオンを意識して、ミスなく仕事をして、チャンピオンになれるように全力でがんばります」というのは安田裕信。
今後、さらにセットアップが進めば安田の言うようにチャンピオン争いも優位に運べる可能性もある。ライバルチームにとっては、嫌なチームが復活してきたというところだろう。
■タイヤ開発が奏功。プリウスが追い上げ2位
一方、最後までGAINER TANAX GT-Rを脅かしたのは予選14番手から追い上げた31号車TOYOTA PRIUS apr GTだ。ちなみに彼らは、リヤのみ2本交換という作戦を採っているが、レース前半に嵯峨宏紀がオーバーテイクを連発。順位を上げたことが2位という結果に繋がっている。
「いっぱい抜いた記憶がありますね。フロントタイヤが元気なので、コーナーを小さく回れるのをずっと感じていました。ストレートは速くはないかイーブンくらいでしたが、うまく立ち上がりで合わせて抜いていくというのをずっとやっていた」と嵯峨は振り返る。
「富士でも表彰台に乗りましたし、これで重くなってしまいましたが、一度勝ちたいですよね。平手選手もせっかく来てくれていますし。タイヤで言えば、今まで開幕からやってきた開発が寄り道せずに進めていられることが大きいですね」
また、後半スティントを担当した平手は、嵯峨のドライブ中から酷暑のなかでエアコンが効かなくなってしまい、レース後やや脱水症状に見舞われてしまうが、点滴を打っただけで元気な様子で質問に答えた。
「表彰台立つときはちょっとクラクラしましたが大丈夫です」と平手。
「レース後半はいちばん速かったです。5番手で嵯峨選手からステアリングを受け取りましたが、ブリヂストンさんが持ってきてくれたタイヤがすごく良かったです。決勝では5番手で上出来かと思いましたが、見事に最後までタイヤは元気で、アベレージもいちばん速かったと思います」と平手。