5月25~26日に行われた2019年のスーパーGT第3戦鈴鹿。ホンダの“お膝元”とも言える鈴鹿サーキットでの開催だったこともあり、大会前からホンダNSX-GTが優勝候補筆頭に挙げられていた。
しかし、決勝ではレクサスLC500勢の後塵を拝し、ARTA NSX-GTの4位がベストリザルトと、想定外の苦戦を強いられた。その要因はどこにあったのだろうか。
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「エンジンではなく、課題は車体」
2018年から採用した「冷却を犠牲にして運動性能を上げる」インタークーラー配置のまま、今季のNSXはエンジン吸気系に手を入れるなどして、「夏場でも戦える」というコンセプトで開発を進めてきた。暑いレースとなった鈴鹿では、エンジンについては概ね及第点だったようだが、じつは“夏場の落ち幅”はエンジンよりも車体の側で問題となっているようだ。
気温が上昇すると空気密度が低下し、ダウンフォース量は減少する。「5℃上がると、(ダウンフォース量は)およそ1.2~1.5%減ると踏んでいます」(RAYBRIG NSX-GT伊与木仁エンジニア)という条件はもちろん全車同じだが、NSXはその影響を受けやすいようだ。
ドライバーの言葉を借りれば「ダウンフォースがしっかりあって、タイヤがグリップする状態なら、僕ら(NSX)は速い」(ARTA伊沢拓也)。裏を返せば、それがないと速さが発揮できないというのだ。
同じくARTAの野尻智紀は公式練習でのマシンを「まるでクルマが浮いているような状態だった」と表現する。FR用モノコックを転用してマシンを仕立てたため理想的な重量配分等が得られず、その結果空力への依存度が高くなっているということなのだろうか。
車高を下げてダウンフォースを取り戻そうにも、今度はNSX特有のバウンシング(跳ね)の問題が顔を覗かすなど、”暑さ対策セットアップ”のスイートスポットは狭い。
鈴鹿の公式練習では路面コンディションが悪かったことに加え、想定外の高気温によってダウンフォース量が低下、その結果マシンがスライドしてラインを外れピックアップがつく、という悪循環にも陥っていたようだ。
また、セクター1に代表される切り返し区間などでは、フロント車軸より前に載せられたミッドシップの“位置&重量指定”ウエイトも、運動性能に影響を与えたであろう。さらに陣営内からは「冬の寒い時期、ダウンフォースがバンバンに出ている状態でセットアップをしているからかも……」との声もあり、寒暖差のアジャストという面から他メーカーにおくれを取っているという見方もできる。
「(優勝した)昨年とのウエイトの違いなどを考えれば決勝ペースは悪くはなかったと思うけど、鈴鹿は獲りたいレースだったし、そこでレクサスが速かったというのは……この先のシーズンを考えると『うーん』という感じ」(伊沢)
“夏場の処方箋”が待たれる。