2019年のスーパーGT GT300クラスを戦っているHOPPY 86 MC(25号車)は、第2戦富士に「大鉈を振るって開発した」新タイヤを投入した。しかし第2戦の決勝はウエットスタートとなり、その実力を見せることはできなかった。
迎えた第3戦鈴鹿ではポールポジションを獲得。松井孝允は新タイヤと、「大幅に見直した決勝向けのセッティング」に対し、ポールポジションを獲得したこと以上に喜び、決勝への手応えを感じていた。これまでの25号車は、予選の絶対王者になり得る速さを見せてきたが、それは速さに特化させたセッティングだったからだ。
それを今回は決勝を重視し、「尖った部分がマイルドになった」という。佐藤公哉は「安心して、より攻められるクルマになった」、松井は「ドライバーとエンジニアが、しっかり会話できるクルマになった」と話す。
スタートを担当した佐藤は、タイヤ無交換のためにタイヤを労りつつもトップを守り続けた。しかし、事実上のトップでコースに戻った松井のペースが上がらない。当初、松井はタイヤが原因かとも思ったそうだが、レース後にサスペンション系のトラブルが発生していたことが判明。
さらに途中からクールスーツが機能せず、「残り10周ぐらいはけっこう危なかった」と松井。フィニッシュ後、松井がうなだれる姿がモニターに映し出されたが、あれは脱水症状によるものだった。
そして誰もが目を疑ったファイナルラップのシケイン。2番手を走っていた25号車がオーバーシュートし、次々に抜かれていく。これは燃料系のトラブルが原因で、130R立ち上がりで突然ガス欠症状が出てしまい、シケインを抜けるまでは惰性で走らせていたという。その後なんとか復帰し、5位でチェッカーを受けた。
さまざまなアクシデントに見舞われつつも、ファイナルラップの130Rまでは2位が見えていた。しかし、5位という結果に「悔いはない」と土屋武士監督。
「強くなるためのステップをしっかり踏めている。知見が増えることが一番大切で、この2日間はいろんなことを拾えた」。新タイヤについてはポジティブな面が見えつつも、「まだ開発途上」だという。それは松井も感じていたことで、「ライフ的にはまったく問題なかったけど、もうちょっと足りないというか、このタイヤではまだ勝てない」。
もちろん、今回“拾えた”ことが、今後のタイヤ開発にも活きてくる。