断続的に雨がコースを襲い、3度セーフティカーが導入されるなど荒れた展開となった2019年のスーパーGT第6戦オートポリス決勝。この混沌としたレースへ急きょ代役としてカルソニック IMPUL GT-Rをドライブし、チームの完走に貢献した千代勝正は「短い時間のなかでやるべき仕事できた」としつつも悔しさも覗かせた。
カルソニック IMPUL GT-Rは今シーズン、佐々木大樹とジェームズ・ロシターの2名をレギュラードライバーに据えてスーパーGTを戦っているが、第6戦では7日(土)の予選日からロシターが耳の不調を訴え、検査のため決勝への参加は見送ることに。
そこでロシターの代役として白羽の矢が立ったのが、テレビ番組の解説としてサーキットを訪れていた千代だった。
「朝サーキットに到着してすぐ、9時30分くらいには最初の連絡がありました」と千代。
「ライセンス関連やフィジカル的な面も含めて運転できる状況かと聞かれて、できますと答えました。ヘルメットなどの装備品は持ってきていませんでしたが、なんとか準備してくれるとのこでした。そのあとチームから状況を伝えられて、もしかしたら(ピンチヒッターを)頼むかもしれないと言われたんです」と千代。
ただ、千代の準備は出来ていても、事前の登録はされておらずイレギュラーの参戦となるため、他のチームの承認などの手続きを済ませなければならなかった。
「オーガナイザーや審査委員会などの確認を経て、12時に行われる監督会議で全チームから許諾が得られないと出場できないのですが、12時までの間に準備を進めていました」と千代。解説の仕事でサーキットに来ていたとはいえ、心と体の準備は出来ていた。
「今年はニッサンとGT500のリザーブドライバーの契約もしているんですよ。日頃からトレーニングもしていますし、今回のオートポリスに向けてのシミュレーターも経験していました。自前の装備品については予選後にいきなりの話だったので間に合いませんでしたけど準備はできていました」
千代の方でも、本来の仕事のテレビ解説の代役をニッサン陣営のGT500アドバイザーでもある本山哲にお願いすることができた。
「(テレビ東京系列の番組)『GTプラス』で解説を務める予定でしたが、それは本山さんに代わっていただきました。だから、僕にとって問題だったのは初めて乗る12号車のセッティングや(ブリヂストン)タイヤに慣れることでしたね」
実際には翌日の関東を直撃する台風15号の影響が考慮されて、本山と同じく解説を務めた中尾明慶さんはスケジュールの都合からレースの途中で帰京。本山はひとりで解説を務めることになったという。
こうして装備品一式を借り、青いレーシングスーツに身を包んだ千代は、決勝直前に行われた20分間のウォームアップ走行に参加。計測4周をこなすとセッション2番手タイムとなる1分38秒822のベストタイムを刻んでみせた。