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スーパーGT ニュース

投稿日: 2019.10.02 13:55

スーパーGT:雨の第7戦SUGOを制したCRAFTSPORTS GT-R。勝利に貢献した平手夫人の一言

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スーパーGT | スーパーGT:雨の第7戦SUGOを制したCRAFTSPORTS GT-R。勝利に貢献した平手夫人の一言

 9月21~22日にスポーツランドSUGOで行われた2019年のスーパーGT第7戦では決勝レーススタート直前に雨が降り出し、各チームはスタートタイヤの選択に頭を悩ませた。そんななか、レースを制したCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rの決断を支えたのは“内助の功”だった。

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 セーフティカーラン後、周回遅れ2台を含む計6台のマシンをパスしてついにトップに立った。しかし後ろから同じように勢いよく迫って来る若者、牧野任祐(Modulo Epson NSX-GT)がいる。向こうが履くダンロップタイヤは、雨のなかで時々ものすごく速い。だが、ピットの雰囲気は落ち着いていた。フレデリック・マコヴィッキが、安定してタイムを刻んでいたからだ。

「後続に15秒差をつけたところくらいからコントロールを始めた」と言うマコヴィッキは、さらにペースを上げることは可能だったが、魔物の餌食にならないよう慎重にマシンを走らせていた。

 モニターを見つめる平手晃平も、冷静だった。

「最初は“ダンプ”がいつまでもつのか不安だった。でも後ろとの差ができた後は、安心して見ていられた」

 平手が言う“ダンプ”とは、ミシュランのウエットタイヤのスペックのひとつで、雨量が少なく、コンディションが不安定なときに性能を発揮する。CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rは、前半も後半も“ダンプ”のミディアムコンパウンドを選択し、これが抜群のグリップを発揮してくれた。

「僕のスティント(前半)くらいが本来の“ダンプ”のコンディションなんだけど、後半の雨量が多いときでも走れていたので、結構幅が広いなと思った」と平手が言うように、そのワイドな性能はうれしい誤算だった。

 ただし、後半はロングスティントとなり、マコヴィッキは平手よりも10周以上も多く走らなければならない。その不安を、多くなった雨量が助けてくれた。雨が強くなれば、摩耗は少なくなるからだ。

グリップがなく苦しむBS勢をイージーに抜いていく。SUGOでの事前のテストでも雨が降り、「ミシュラン速し」の声があがっていたが、本番ではその言葉どおりとなった。
グリップがなく苦しむBS勢をイージーに抜いていく。SUGOでの事前のテストでも雨が降り、「ミシュラン速し」の声があがっていたが、本番ではその言葉どおりとなった。

 ミシュランは、昨年の中盤以降は、スリックではデグラデーションの問題を抱え、ウエット性能でもライバルに遅れを取っていた。だが今季は開発の方向性を見直し、ウエットテストも精力的に行なった。また、陣営内にミシュランを知り尽くしているマコヴィッキを招へいした結果、ライバルと戦えるレベルに復活したのである。

 タイヤ同様、マシンのセットアップも昨年は苦労した。B-MAXにとってGT500初参戦であり、マシンに対する習熟度という点では圧倒的に不利。ただ過去にMOLAが初参戦イヤーにしてタイトルを獲得、それも2年連続という事実があるだけに、言い訳にはならない。しかし明らかにマシンは速くない。そこでMOTUL AUTECH GT-Rと同じセット、同じタイヤのスペックを選んでもみたが、うまくいかない。

 そこで今季は方向性を変更。MOTUL GT-Rのコピーではなく、完全に独自路線に切り替えたのだ。ドライバーがふたりとも一新されたこともあり、最初からふたりの好みに合わせてセッティングした。

 とくに平手とマコヴィッキは、ニスモのふたり以上にブレーキング時のスタビリティを求める傾向にあり、それに合わせる必要もあった。また、ニスモはメーカーを代表するワークスであり、プレッシャーも大きいためチャレンジングなセットはトライしづらい。対してサテライトチームであるB-MAXは自由度が大きく、なんでもできることはメリットであった。

 その結果、「23号車(MOTUL GT-R)とのクルマの差は、開幕時点ではないと思っていた」と平手は言う。ベースができた今季は、持ち込みからセットを大きく変えることもほとんどなくなり、第2戦富士ではQ1でトップ、第4戦タイはQ2で3番手、第5戦オートポリスはQ2で2番手と、速さが備わってきていることは明らかだった。

 もちろん、まだ完璧というわけではない。「とくにタイヤのウォームアップ性がなぜか悪い。いまだにそれは課題として残っています」と宮田雅史エンジニアは言う。実際、マコヴィッキのアウトラップでは2台に抜かれ、その翌周は1コーナーで軽くオーバーラン。さらにその翌周はMOTUL GT-Rに抜かれている。

 それでもチームは今回の目標を“表彰台”に設定していた。Q2でマコヴィッキが若干ミスして7番手となっても、「表彰台はいける」という予感はあったのだそうだ。

 あとは個々のタイミングで、いかに的確な判断を下せるか。その最初にして最大の場面は、決勝前のグリッドだった。スタートでどのタイヤを履くか……。「終盤まで降らない」という予報もあったりして、各チームともグリッド上で作業可能な制限時間まで静観していた。そんなとき、平手は最終コーナーの先、西の空を振り返る。見やった先にあるのが蔵王山。

「蔵王が霞がかってきたら雨が降る」

 そう教えてくれたのは、誰あろう平手の奥様だ。じつは仙台出身で、SUGOの天気事情に詳しい。迷わず溝付きのタイヤを選んだ。グリッド上でどのチームよりも早くスリックから履き替えた。

 データ全盛のこの時代、そのような“昔からの言い伝え”でも役に立つのか? 「なりますね!」と、宮田エンジニアはニンマリしながら即答した。

レクサス陣営からGT300を経てニッサンに移籍した平手は、1年のブランクがあることもあり、当初は不安だったという。だが昨年末のオーディションで、ウエットのなかそこそこのタイムを出せたことで自信になったという。今回で8勝目だが、「この勝利は重い」と語る。
レクサス陣営からGT300を経てニッサンに移籍した平手は、1年のブランクがあることもあり、当初は不安だったという。だが昨年末のオーディションで、ウエットのなかそこそこのタイムを出せたことで自信になったという。今回で8勝目だが、「この勝利は重い」と語る。


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