14車種29チームがしのぎを削る2019年のスーパーGT GT300クラス。そのなかから1台をピックアップし、マシンのキャラクターや魅力をドライバー、関係者に聞いていく連載企画。2019年シーズン第4回目は、世界中のGT3カーレースを戦い、スーパーGTではAudi Team Hitotsuyamaが投じている『アウディR8 LMS GT3』をピックアップする。同チームは2019年からデリバリーが開始されたエボリューションモデルのR8を走らせており、今回は2018年からチームへ加わった富田竜一郎に、最新モデルのインプレッションを聞いた。
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1998年のル・マン24時間に登場したプロトタイプカー『R8』のテクノロジーを盛り込み、2006年にデビューしたアウディのフラッグシップスポーツカーがR8。そして、当時将来性を期待されたGT3カテゴリーに向け、2009年に生まれたのがアウディR8 LMS GT3だ。
アウディ・スペースフレーム(ASF)を採用、V10エンジンを積む市販レイアウトを有効に活用しており、市販車から流用されたパーツは非常に多い。セールス価格も優秀で、39万8000ユーロ(約4700万円)とGT3のなかでもリーズナブルだ。
アウディ全体では、これまでGT3をはじめGT4、TCRレーシングカーのRS3 LMSを含め563台ものレーシングカーを販売しており、全世界的にカスタマーレーシングをメーカーとしての柱のひとつにしていることが分かる。
そんなアウディR8 LMS GT3は、2009年にデビューした初代のうち、2012年に登場したエボリューションバージョンの『ウルトラ』、2015年にデビューした二代目R8 LMS、そして2019年に登場したR8 LMS GT3 EVOの四世代に分けることができる。
それらのR8 LMS GT3を一貫して使用し続け、アウディジャパンから信頼を集めGT300クラスを戦い続けているのが、Audi Team Hitotsuyamaだ。2018年からチームに加わった富田竜一郎に、『EVO』となった2019年モデルについて聞くと、「操作に対して的確に反応してくれるクルマですし、ドライバーとクルマの一体感をものすごく感じることができるクルマ」だという。
もともと富田は、スーパーGTでR8 LMSをドライブする以前に、スーパー耐久でR8 LMSウルトラに乗った経験があるが、2018年のR8 LMSに乗った印象は「まったくの別物」だったという。
「自分がしたことに対して、すごくクルマがリニアに応えてくれますし、自然吸気ということもありトルク特性もフラットで、乗りやすいです。それに、ミッドシップのスポーツカーなのでカッコいいですし、『いいクルマだな』と素直に感じることができましたね」というのが2018年の第一印象だった。