ドライバーやメカニック、チーム関係者をはじめ、さまざまな職種の人たちが携わっているモータースポーツの世界。ドライバーなど、目につきやすい職種以外にも、陽の目を浴びない裏方としてモータースポーツを支えている人たちが大勢いる。そこで、この連載ではレース界の仕事にスポットを当て、その業務内容や、やりがいを紹介していく。
第9回目は番組制作を行い、サーキットではレースの生中継の責任者として働く番組プロデューサーに注目。J SPORTSのモータースポーツはラリー、二輪、四輪と大きく3つに分かれるというが、そのうち四輪に携わり、スーパーGT中継等を担当する三原弘プロデューサーにスーパーGTの番組制作方法やプロデューサーの役割について話を聞いた。
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現代、モータースポーツ観戦に必要不可欠なものがテレビや動画放送・配信だ。レースファンのなかには、レース中継を観たことがきっかけでモータースポーツに興味を持った方も多いはずだ。
そのレース中継は、実況や解説、ピットレポーター、そして裏方も含めた様々なスタッフが番組制作に関わって進行されている。今回はJ SPORTSの番組プロデューサーを務める三原弘さんにインタビューを行った。
まず、スーパーGTの中継映像はどのようにして作られるのか。制作に関わっている会社はJ SPORTS以外にも複数あるが、各社の関係性と技術者の役職を説明してもらった。
「スーパーGTの場合、中継映像は株式会社GTアソシエイション(GTA)が作っています。そのなかで、GTAは制作を株式会社クロステックに発注し、技術を株式会社テレテックなどに発注しています。中継映像自体はGTAとして作っているため、J SPORTSは映像をいただいて放送しているという関係性です。ただ、僕も含めてスタッフ3人が中継スタッフに協力体制で入り一緒に作っています」
「現場では、制作スタッフ9人と出演者6人の15人がチームで動いていることが多く、そのほかに、カメラマン、スイッチャー、音声、CGなど技術系スタッフが60人ほどいます。回線や電源を担当する人も合わせると90人くらいです」
多くの制作スタッフと技術者が協力して仕事をすることにより、テレビでの中継が成り立っているというが、そのなかで三原さんがJ SPORTSの番組プロデューサーとしてどのような役割を担っているのか尋ねた。
「スーパーGTだと生放送などの責任を負います。リクエストを出して中継の段取りを決めたり、生中継をスタッフとともに作っています。どういう視聴者やファンをターゲットに番組を作るかを決めないといけないし、どこの取材をするか、出演者など何にお金をかけるかも決めています。(ライブ中継では)放送の延長や早収、中止の決定をすることも大事なことです」
「サーキットでは、ライブ中継の対応が半分で、そのほかにはスーパーGT以外の番組のキャスティングなどをしています」
ライブ中継を行っている予選や決勝レースについて詳しく聞くと「ライブ中継の対応については、中継車のなかで仕事をしています」といい、中継車で行う仕事を語った。
「十数台のカメラで撮影した映像があり、ひとりでは追いきれないため、スポッターという役割が必要です。9人程の制作スタッフがいて、中継車には4人乗っています」
「中継車の制作スタッフ4人は、カメラを切り替えたり、VTRの指示を出したりします。僕は主にタイミングモニターを見ながら、レース全般の状況を把握して、出来事が起きたら情報を伝えます」
「バトルの展開をみて、バトルが終わったら『次こっちもやっているよ』などの情報を出します。そういう出来事を見逃さないようにするための役割です。何も起こらず順調にいっている時は、いいところと悪い所を感じて、次に繋げるのがプロデューサーとしての仕事だと思います」
なお、レースのない平日は「収録や次の番組の準備が多いですね。だいたい2カ月先のことを準備しておかないといけません。スーパーGTだけでも事前番組としてGTV~SUPER GT トークバラエティ~もあり、予選、決勝、オンボード、15分ハイライト、総集編、ナビなどのたくさん番組があるのでその仕事もしています」という。
ほとんどのレースカテゴリーが12~3月の間はオフシーズンとなるので、その間はモータースポーツの仕事をする機会が減るという三原プロデューサー。冬はレース以外に「スキーとWWE(アメリカのプロレス団体)」と別ジャンルのスポーツを担当しているという。
「冬場はスキーを担当します。スキーだけでもアルペン、ジャンプ、モーグル、複合と4つあり、毎週どれかのライブ中継を担当するような状況でした。でも、今はWEC世界耐久選手権やデイトナ24時間が開催されていて(日程が)被るので、複合とジャンプは去年から別の人に任せ、モーグルもモータースポーツ担当の若いスタッフに渡そうとしています」
「WWEも現場は若いスタッフに渡そうとしているので、日常業務からは外れ、僕は日本公演の対応はする感じですね。そうなれば基本的にはアルペンだけですが、それもほぼ毎週開催されています。アルペンが現場に行っていて面白いんです」