新型コロナウイルスの感染拡大に揺れる国内モータースポーツ界。2020年はGT500クラスへのクラス1車両の導入、年間2戦の海外開催、熾烈さを増すGT300クラスなど数多くのトピックスがあったスーパーGTも、開幕から5戦が延期となってしまった。ただ7月の開幕を前に、ちょっぴり知識をつけておけば、来たる開幕がより楽しく迎えられるはずだ。そこで、不定期連載となるがスーパーGT参戦チームのチーム名とカーナンバーの由来をお届けしよう。第21回目は、GT300クラスに参戦するTOMEI SPORTSだ。
■TOMEI SPORTS
マシン：RUNUP RIVAUX GT-R
ドライバー：青木孝行／田中篤／柴田優作
カーナンバー：360
監督：中野啓吉
タイヤ：ヨコハマ
2019年には第8戦もてぎで、RUNUP RIVAUX GT-Rとして念願の初ドライバーズポイントを獲得するなど、予選を中心に強烈なスピードをみせ躍進をみせたのがTOMEI SPORTS。1968年に設立され、鈴木誠一や高橋健二を擁し1970年代の日本のモータースポーツを牽引する存在だった東名自動車から、レース部門をまかされるかたちで1985年に設立されたのが東名スポーツだ。
現在の富士スピードウェイの東ゲートそばにファクトリーをかまえた東名スポーツは、国内トップカテゴリーで活躍。全日本F3でのチャンピオンやGC等を手がけてきた名門チームだ。チーム名はそのまま『東名スポーツ』を英字表記したものがスーパーGTでも使われている。
一方、車名にもなっている『RUNUP』は、ドライバーでもある田中篤がオーナー。田中は佐賀県を中心に運輸業を手がけるグループの代表取締役であるが、そのグループ名が『ランナップ』。『RUN』と『UP』という言葉からも分かるとおり、「飛躍しよう」という思いが込められている。
田中は1986年からシビックレースに出場していた大ベテラン。1990年には全日本F3選手権に参戦したほか、オートポリスで行われていたフォーミュラのFC45にも出場している。1990年から96年、そして1999年からスーパー耐久に参戦を開始したが、東名スポーツとはこの頃からの長い間柄だ。
RUNUPは東名スポーツ、松永まさひろらとともにST1クラスにスーパー耐久へ挑んでいたが、2017年まではカーナンバーとして『17』を使っていた。ただ、田中によれば「風水で悪い数字だった」とのことで、「すべてまるく収まるように」と1周の角度にあたる『360』が選ばれた。また、田中が3月6日生まれだということも理由のひとつ。36はトムスが使っていた番号でもあり、『360』はふたつの意味でピッタリだった。
TOMEI SPORTSは2010年、スーパーGTに参戦を開始する。初年度はアークテックが使用していたポルシェを走らせたが、2011年に、ドイツのキャラウェイ・コンペティションが製作し、ADAC GTマスターズで好結果を挙げていたコルベットZ06-R GT3を投入することになった。
マシンは自然吸気7リッターV8エンジンを積む迫力のマシンで、前年GT300に登場したポルシェ911 GT3 R、同年登場のBMW Z4 GT3に次ぐGT3カーだったが、厳しい性能調整もあり苦戦。コルベットとD1ドライバーの岡村和義を起用するも、クラッシュ等もありなかなか結果が残せなかった。
2013年からは、ニッサンGT-RニスモGT3にスイッチ。前年に加わった白坂卓也、さらに2014年に加わった吉田広樹と、多くの若手ドライバーが速さをみせてきた。また2016年に加わった柴田優作、2017年に加わった青木孝行と、田中との“トリオ”ができあがり、速さと経験をもつ3人で挑んでいる。チームはまた、ロックバンドのDOESとのコラボレーションを行うなど、ユニークな試みも行ってきた。
2019年から投入したニッサンGT-RニスモGT3の2018年モデルは田中にも合っているようで、中野啓吉監督は「田中さんのセットアップのうまさが引き立っている」という。ピット裏でもいつも笑顔が耐えないチームワークが魅力だが、「プライベーターは楽しくやらないと」と中野監督。2020年もGT300を盛り上げてくれるチームなのは間違いない。
