年々観客動員数も増加し、2020年からドイツのツーリングカーシリーズ、DTMドイツ・ツーリングカー選手権との共通車両規定『Class1(クラス1)』も導入されるなど、世界的にも存在感を増しているスーパーGT。日本国内に目を向ければグランツーリスモSPORTにマシンが収録され、ゲームセンターではシリーズをイメージしたゲーム機が稼働するなど、さらに認知度、ファン層が広がっている。
4月6日時点で、2020年シーズンの開幕は7月11~12日とされている。開幕までの間、これからスーパーGTをチェックしようというかたのために、あらためてシリーズの歴史やレースフォーマットをおさらいしてみよう。熱心なスーパーGTファンのかたも、スーパーGTの魅力を再確認する機会になれば幸いだ。第9回目はGT500クラスを戦う3メーカーについて、その特徴とともに紹介していく。
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2020年シーズンのGT500クラスには各チームがニッサン、トヨタ、ホンダの国内3メーカーが開発・製造したマシンの供給を受けて参戦している。その内訳はニッサンGT-RニスモGT500が4台、トヨタGRスープラGT500が6台、ホンダNSX-GTが5台の計15台だ。
過去にはフェラーリやマクラーレン、ランボルギーニなど海外メーカーの車両が独自改良されたGT500車両が参戦していた時期もあるが、2009年以降のGT500クラスではニッサン、トヨタ、ホンダの3メーカーがしのぎを削っている。
■ニッサン:シリーズ創設初年度から戦う最古参
ニッサンはスーパーGTの前身、JGTC全日本GT選手権の初年度となる1994年シーズン開幕戦から絶えず参戦している最古参メーカーだ。GT500クラスの前身、GT1クラスに4WDとFRの仕様が異なるBNR32型スカイラインGT-Rで参戦し、4WD仕様のカルソニックスカイライン(影山正彦)がJGTCの初代ドライバーズタイトルを獲得した。
車両開発を行うのはニッサン・モータースポーツ・インターナショナル株式会社(NISMO/ニスモ)。ニスモは日産自動車の宣伝部の一室と追浜工場の特殊車両実験課が合わさる形で1984年に創業し、現在は横浜市の鶴見区に社屋を構える。
メーカー名としては日産だが、モータースポーツ業界ではニスモの会社名からカタカタでニッサンと表記されることが多く、スーパーGTにおいても漢字ではなく“ニッサン”“ニッサン陣営”と表記されることが多い。
ニスモは開発を行いながら自らチームも運営。車番は23(ニッサン)を選択しており、メディアもこの23号車を“エース車両”“ワークス・チーム”と表現しているようにニッサン陣営の中心的役割であることは間違いない。ちなみに、テストなどに参加する開発車両のゼッケンは「230」と表記される。
通称ワークスチームとなる23号車とそれ以外のチームとの関係性や契約形態はホンダ、トヨタなどとは異なり、車両開発だけでなく車両パーツの供給やドライバー契約の管理もニスモが中心に行い、ニッサン陣営のエンジニアもニスモから派遣される形で組織運営されている。
そのため、ホンダ、トヨタのチームとは異なり、メーカーとしての一体感が強く、他メーカーと比べてレース運びや戦術面でも統制がされやすいと言われている。
ニッサン陣営のこれまでのスーパーGTの成績としては、JGTC時代を含む過去26シーズンでGT500クラス最多となる12回のドライバーズタイトルを獲得している。
2020年シーズンにはCRAFTSPORTS MOTUL GT-R(平手晃平/千代勝正)、カルソニック IMPUL GT-R(佐々木大樹/平峰一貴)、MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ)、リアライズコーポレーション ADVAN GT-R(高星 明誠/ヤン・マーデンボロー)の計4台がエントリーする。
各チームに供給されるマシンはDTMとの共通車両規定『Class1(クラス1)』導入後もニッサンGT-Rがベース。新規定に沿った空力デザイン、車両設計がなされているほか、搭載するエンジンも出力の向上やパワーカーブの最適化を図ったとする新型エンジン『NR20B』を搭載。2015年以来の王座奪還に臨む。
ニッサンの新型エンジン『NR20B』については、ライバルと同様にプレチャンバー技術が投じられている可能性が濃厚。オフシーズン中に多発していたメカニカルトラブルは、このプレチャンバー導入によるものとの見方が強く、開幕までに充分な信頼性を確保できればトヨタ、ホンダ勢に対抗する武器となるはずだ。