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スーパーGT ニュース

投稿日: 2020.05.08 12:46
更新日: 2020.06.30 11:19

開発競争激化の果てに有名無実化したフレーム。03年規則はついに”一線”を超えた【スーパーGT驚愕メカ大全】

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スーパーGT | 開発競争激化の果てに有名無実化したフレーム。03年規則はついに”一線”を超えた【スーパーGT驚愕メカ大全】

 1994年に始まった全日本GT選手権(JGTC。現スーパーGT)では、幾多のテクノロジーが投入され、磨かれてきた。ライバルに打ち勝つため、ときには血の滲むような努力で新技術をものにし、またあるときには規定の裏をかきながら、さまざまな工夫を凝らしてきた歴史は、日本のGTレースにおけるひとつの醍醐味でもある。

 そんな創意工夫の数々を、ライター大串信氏の選定により不定期連載という形で振り返っていく。第2回となる今回は特定の車種ではなく、ある転換点以前に存在した驚愕のメカニズムと、そこに存在した「ムダ」を省くためのルール改正について。

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 本企画は、JGTCおよびスーパーGTを通して眺めたとき、印象に残った「驚愕メカ」について語るという趣向で、前回(第1回)では2003年に行なわれたJGTCの車両規則改定とNSXについて解説した。しかし、もともと市販車改造クラスであるはずのGTレースの車両規定がなぜ徐々に規制を緩める形で改定されていったのかについて基礎知識として知っておいた方がよいと思うので、2回目の今回も03年について語ることにしよう。

 かくいう筆者も03年の車両規定を聞いて「なぜ改造を厳しく管理することで量産モデルとの関係を維持する方向ではなく、改造範囲を拡大してレーシングカーに近づけてしまうのか」と疑問に思ったものだった。

 だが、考えてみればレースに関わる技術者たちは車両規則の中でできるだけパフォーマンスを引き出そうとして知恵を絞るわけで、車両規則が改造範囲を拡げるか限定するかによらず結局は開発競争が始まってしまうのだな、車両規則を決めるのは難しいものだなということをこのときに思い知った。

 たとえば初期の車両規則では、量産モデルのモノコックをそのまま残さなければならないと定めていた。量産車改造クラスとしては当然の規定である。しかし走行性能が上がれば剛性不足となるので補強が必要になる。そこで行なわれたのはロールケージの利用である。

 ロールケージは本来、転倒時にキャビンが変形してドライバーを傷つけないようにするため車室内にスチールパイプを張り巡らせて作った「防護ワク」だった。しかし頑丈なワクを車室内に組み込めば、通常走行時には車体の剛性アップのためにも働く。そこでどうせ義務づけられている重量物なのであれば、ロールケージを積極的に車体剛性アップのために使おうという考え方が広がっていった。

 当然ながらJGTCでも、「ロールケージの延長」という名目で車室内に留まらずバルクヘッドを突き抜けてエンジンルームやトランクルームまでスチールパイプを伸ばす手法が一般的になった。そのうち、この「ロールケージ」をもっとフレームとして積極的に使うことはできないかという考え方も生まれた。

 しかしGTの車両規則ではベースになった量産車のフレームはそのまま使わなければならない。当初はこの規則のためにロールケージはあくまでも名目上「補強」のための立場から抜け出せなかった。とはいえ実際にはロールケージはフレームとして充分な剛性を受け持ち、量産車のフレームはむしろ脇役になっていった。

 ここが非常におもしろいところなのだが、こうした流れを予測して封じ込めようとしたのか、車両規則にはもともと興味深い規定があった。「サスペンションはサイドフレームに取り付けなければならない」とする一文である。つまり、いくらロールケージを発展させたところでサイドフレームがなければサスペンションが成立しないのだから何がなんでもベース車両のフレームは残せよ、と言っているのだ。

 だが技術者たちが「はいそうですか」と言うわけがない。実はどんどん走行性能が上がるにつれ、サスペンションアームを長くとって運動性を向上させる必要が出てきたのだ。しかしサスペンションアームを長くとろうとするとベース車両のサイドフレームが壁のように邪魔をする、困った状況になってきた。

■規則も想定外だった「食い込む」方向への解釈


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