新型コロナウイルス禍において、国内レースの開幕が遅れている。そんな中、国内のトップドライバーたちはどのように“おうち時間”を過ごしているのか。普段の生活の様子やトレーニング事情、そして来たる開幕戦に向けての意気込みをリモート取材を行った。
今回はスーパーGTではARTA、スーパーフォーミュラではチーム無限に所属する野尻智紀に話を聞いた。2020年、野尻はARTAから6年目、チーム無限で2年目のシーズンを迎える。
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Q:スーパーGTの富士テストが中止になったあと、どのような生活をされていらっしゃいますか?
野尻智紀(以下:野尻):どんな生活かと言われると正直、そんなにやることもないんです(苦笑)。でも、ここ数年ずっとオフがあるようでなかった生活だったので、大変な状況ではありますが、メンタル面をしっかり休める期間としては、プラスな面もあるのかなと。ただ、トレーニングなんかも100%満足にできる状況でもないので、その辺りはうまく維持するような形でやっています。
Q:私生活においてこの期間中に何か新しく始めたことはありますか?
野尻:YouTubeを始めましたね。始めるときはすごく大変で、まず「編集とかどうやるの?」って(笑)。いままでの僕はレースにすごく時間を使っていたんですね。気持ちとしてはモータースポーツの人気が上がって欲しいと思うのに、そのために何か行動していたわけではなかった。でもせっかく空いた時間なので、ファンのみなさんに少しでも興味を持ってもらえるようにと思って始めてみました。
Q:何か参考にしているYouTubeチャンネルなどはあるのでしょうか?
野尻:勉強になっているかどうかは別として、よく見ているのは「水溜りボンド」です。ゆるい感じで僕的にはすごい好きなんです。よかったら見てみてください(笑)。
Q:YouTube以外に何か見ている動画コンテンツなどはありますか?
野尻:他にはないですね。家族もいてシミュレーターやそれこそYouTubeの編集、トレーニングなどの時間を自由に使わせてもらっているので、あまりそれ以外のことはしていません。こういう期間だからとあえて好きなようにやらせてくれていることにすごく感謝しています。
■シミュレーターでペダル操作の改善を図る
Q:自宅でのトレーニング環境について、何か工夫していることはありますか?
野尻:基本的に自宅にウエイトはないんですけど、重いものはいくつかあったりするのでそれを使ったり、あとは基本的なトレーニングで体幹を鍛えています。自分がこのオフに取り組んでいたことをなるべく継続的にやるようにしているという感じですかね。あとはペダル操作に必要な繊細な動きをリハビリ的な感覚で忘れないようにするために、シミュレーターも使っています。
Q:シミュレーターは以前からやっていたのでしょうか?
野尻:いえ、これまではやってなかったです。でもちょうどこのオフ中にやりたいと思って準備を進めていたんです。それで自粛が叫ばれるようになった時にちょうど自宅でできる環境が完成しました。いま、個人的に抱えている課題に対して練習になるとは思います。
Q:課題というのは?
野尻:足首の柔軟性がもう少し欲しいんですよね。柔軟性がないからなんだと思うんですが、以前から少しペダル操作が雑になるところがあって。それを感じていたのになんとなくごまかしながらやっていたんです。でも細かいところではあるんですが、ロガーを他の選手と比較したときに、僕にはできない足の動かし方をしている選手がいた。それを見て同じようなロガーの形になるように、アクセルの抜き方、ブレーキの踏み方ができるようになったらいいなと。それでシミュレーターを取り入れて、実際のペダル感覚に近づけるようやってみています。
Q:シミュレーターの操作感覚は実車に近いんでしょうか?
野尻:調整の仕方によってそれなりに近づけることはできると思います。でもメカニズム的には違うので完全に一緒ではないですね。ただ似せることはできるので、実車との違いをしっかり把握して取り組んでいれば、そこまで大きな違いはないかなと思う。
Q:シミュレーターに使用しているのはどのソフトウェアなんでしょうか?
野尻:グランツーリスモSPORTもやりますが、いまはiRacingをよく使っています。いろんな挙動変化とかが100%リアルというわけではないけれど、実車に近いものがあります。シミュレーターで練習したからといって速くなるというものではないと思いますが、リアルに表現されていない部分は理解した上で上手に利用しながらやっています。
シート合わせ?完了 pic.twitter.com/gkr7HWldSj
— Tomoki Nojiri 野尻智紀 (@Tomoki_Nojiri) May 16, 2020