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スーパーGT ニュース

投稿日: 2020.06.25 13:36
更新日: 2020.06.30 11:11

いまや絶滅危惧種の職人魂。つちやエンジニアリング流“GT500独自チューン”の妙技【スーパーGT驚愕メカ大全】

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スーパーGT | いまや絶滅危惧種の職人魂。つちやエンジニアリング流“GT500独自チューン”の妙技【スーパーGT驚愕メカ大全】

 1994年に始まった全日本GT選手権(JGTC。現スーパーGT)では、幾多のテクノロジーが投入され、磨かれてきた。ライバルに打ち勝つため、ときには血の滲むような努力で新技術をものにし、またあるときには規定の裏をかきながら、さまざまな工夫を凝らしてきた歴史は、日本のGTレースにおけるひとつの醍醐味でもある。

 そんな創意工夫の数々を、ライター大串信氏の選定により不定期連載という形で振り返っていく。第8回となる今回は、これまでの「メーカーによる開発」から離れ、いちチームによる創意工夫をこらしたアイテムを振り返る。

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 近年のGT500クラスを戦う車両は、各メーカーの開発部門が開発してそれぞれ関係のあるサテライトチームに供給したものであり、基本は完成状態でデリバリーされてきてそのままの仕様で1シーズンを戦う。

 基本的なコンポーネントは公認部品となっていて、自由に改変することはできない規則になっているため、レースを現場で闘うチームは、自分たちの車両に独自の工夫やアイデアを盛り込んで「チューニング」することができない。できるのは、公認部品として供給される部品を交換したり、ブレーキやラジエターなどの空気口をガムテープで塞いで温度調節をしたりするくらいのものだ。

 本来モータースポーツは、ドライバーが車両を操って行なう速さ競争の一方で、その車両を開発しメンテナンスする技術者たちが小さいモノから大きなモノまでさまざまなアイデアをひねり出しては車両に改造を加え、少しでもパフォーマンスを高める「現場の技術競争」がふたつの柱として成立していたものだ。

 しかし近年はスーパーGTに限らず、コスト高騰や行きすぎた技術競争を防止し競技車両の安全性を保つことを目的に、技術の競争を極力抑制しよう、そのためには現場での開発はできるだけ避けようというのが世界的な流れになっている。

 スーパーGTでも以前は、供給された車両にチームが独自の改造を加えることが少なからず為されてはいたのだが、近年は基本、車両規則の中で許されている範囲であってもメーカーは供給先のチームが独自の改良を加えることを許していない。メーカー自身がこうした方針を打ち出しているのは、当初の基本仕様を守り開発熟成の方向性を保つためである。

 まだこうした方針が確立していなかった頃には、メーカーから供給された車両のロールケージに剛性面の問題を持つけだし独自の補強を加えたものの、それを見つけた供給元のメーカーからかなり厳しいクレームが来て、元に戻さざるを得ないというようなこともあったようだ。

 こうしていまやGT500を戦う各車両は、メーカー毎にほぼ同一の仕様でコースに現れる。だからといって、現場でレーシングカーを走らせる技術者たちは自分たちの発想や技術で少しでもレーシングカーを速く走らせたいと願っている人たちだ。その情熱は容易に消えるわけではない。

■つちやにとってはGT500も“素材”。風洞よりも経験を重視


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