スーパーGT ニュース

投稿日: 2020.06.30 11:30
更新日: 2020.06.30 15:37

“市販車なし”で登場したHSV-010 GT、革新的サイドラジエターと冷却水の秘密【スーパーGT驚愕メカ大全】


スーパーGT | “市販車なし”で登場したHSV-010 GT、革新的サイドラジエターと冷却水の秘密【スーパーGT驚愕メカ大全】

 1994年に始まった全日本GT選手権(JGTC。現スーパーGT)では、幾多のテクノロジーが投入され、磨かれてきた。ライバルに打ち勝つため、ときには血の滲むような努力で新技術をものにし、またあるときには規定の裏をかきながら、さまざまな工夫を凝らしてきた歴史は、日本のGTレースにおけるひとつの醍醐味でもある。

 そんな創意工夫の数々を、ライター大串信氏の選定により不定期連載という形で振り返っていく。第9回となる今回は、エポックメイキングな「市販していない車両をベースとしたGT500マシン」と、そこに搭載された技術を振り返る。

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※当連載は全10回を予定しています。

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 JGTC〜スーパーGTは、もともと基本的に一定数が生産され一般ユーザーに販売された量産車をベースに開発した競技車両で争われるレースであり、いくら車両規則を満たしていてもベース車両が存在しないレーシングカーは出走することができなかった。

 しかし2010年のGT500クラスにデビューしたホンダHSV-010 GTは、ベース車両が1台も市販されたことがなく、サーキットでしか見ることのできない不思議なマシンだった。

 HSV-010 GTがスーパーGTに出走できたのはなぜなのか。

 実は前年の09年、スーパーGTの規則が大きく改定され、「JAFによって認められた車両」ならばベース車両にできるようになっていた。本来は、生産中止などによってすでに市販されなくなった車両をベース車両として認めるための、救済措置を拡大した形の規則である。

 もともとホンダは、初代NSXの後継車となるFRスポーツカーを2010年に発売し、この車両をベースにGT500用車両を開発する予定だった。ところが2008年に発生した世界規模の金融危機と経済後退、いわゆるリーマンショックを受けて発表直前に開発が中止となり、ベース車両がなくなるという事態になってしまった。

 ホンダは急遽それまで使用していた初代NSXをベース車両として使い続けることを検討した。しかし09年から新しい車両規則が導入されGT500車両は全車排気量3400ccの自然吸気V型8気筒エンジンを搭載したFRレイアウトが義務づけられており、本来ミッドシップのNSXをFR化する大改造が必要だったうえ、初代NSXの生産は2005年の段階で中止されており営業的にも問題があった。

 そこでホンダは09年に定められた新しい規則を根拠に、市販直前まで開発が進みながら発売されなかったFRスポーツカーを「JAFによって認められた車両」として認定を受け、その車両をベースにGT500車両を開発し2010年シーズンに送り込んだ。これがHSV-010 GTである。

 このとき、「HSV-010 GT」のベース車両となったFRスポーツカーには改めて「HSV-010」という車名がつけられた。競技車両の名称からベース車両の名称が決まったきわめて珍しい例である。ちなみにHSVは「Honda Sports Velocity」の略で、010はデビュー年度を表している。

 HSV-010 GTはデビューした初年度シリーズチャンピオンカーとなったが、翌シーズンには記憶に残る驚愕メカが投入されてさらに進化を果たした。当初フロントグリル内に置かれていたラジエターを左右フロントフェンダーのタイヤハウス後部へ移設し「サイドラジエター」レイアウトとしたのである。

2011年の開幕前テストにて。マシン左後方から、ARTA HSV-010のサイドラジエターを覗く。
2011年の開幕前テストにて。マシン左後方から、ARTA HSV-010のサイドラジエターを覗く。

■サイドラジエター化にとどまらなかったHSV-010 GTの進化


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