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スーパーGT ニュース

投稿日: 2020.07.21 07:30
更新日: 2020.07.21 16:55

苦労を選んだはずの埼玉トヨペットGreen Brave。本人たちも予想外の劇的勝利《第1戦GT300決勝あと読み》

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スーパーGT | 苦労を選んだはずの埼玉トヨペットGreen Brave。本人たちも予想外の劇的勝利《第1戦GT300決勝あと読み》

「うちの代表は、より苦労する方をとるんですよ(苦笑)」

 新型コロナウイルスの影響でもう今から半年前になってしまったが、GRスープラのボディをまとったJAF-GTマシンが富士スピードウェイでシェイクダウンされたとき、埼玉トヨペットGreen Braveの関係者は笑った。2019年、チームは躍進の一年を遂げた。第1戦岡山ではチーム初の表彰台を獲得、第5戦富士では堂々たるトップ争いを遂げた末の2位。同じパッケージでも2020年は戦えたはずだが、チームは新型車両、それもブランニューのJAF-GT車両を投入することを決断したのだ。加えて、吉田広樹のパートナーには、ルーキーの川合孝汰を起用した。2019年と同じようにはならないはず……。チームも含めて、そんな予想が大半だった。

「昨年は惜しいところまでいったので、早いうちに勝ちたいと思っていましたが、あいにく新車に変えてしまったので(笑)、『またこれからふたたび積み上げなのか』と思っていました。なので、こうして開幕戦で勝てるとは思っていなかったですね」とレース後笑顔をみせてくれたのは、先ほどのコメントのなかでの『うちの代表』、平沼貴之チーム代表だ。

「いまは喜び半分、驚き半分という感じです。テストが良かったので期待はしていたんですけどね」

 とはいえ、その予兆はあった。シェイクダウン時からこのマシンはトラブルもほとんどなく、岡山、そして富士の公式テストでもスピードは十分。何よりルーキーの川合も好タイムをマークしていたからだ。不安定な天候で、公式練習の時間が少なかったにもかかわらず、予選でも川合がQ1を見事突破。「はじめて後輩と組む」という吉田がQ2で4番手につけた。

 そしてチームが考えた戦略が、JAF-GT+ブリヂストンだからこそできるタイヤ無交換作戦だ。しかし、川合は初めてのスーパーGTであり、これまでフォーミュラで育ってきていただけに、タイヤを温存する走り方も初めて。「僕がタイヤを使ってしまうクセがある」と川合も認めていたが、予選順位が前方だったこともあり、中団のバトルでタイヤを酷使する心配も少ない。川合がスタートを務め、タイヤ無交換作戦を良く知る吉田が後半を務めることになった。

 レースは序盤から川合がクレバーなバトルで順位を上げ、チームの想定どおりに進むが、暗雲が立ちこめたのが、37周目に投入されたセーフティカーだ。すでに無交換でピット作業を終えていたSAITAMATOYOPET GB GR Supra GTはトップに立っていたが、コクピットにいた吉田に苦い記憶が蘇る。

「またこれかよ! 去年と一緒だ。この後何台抜かれるんだ……」

「これ」とは、昨年の第5戦のこと。同様に無交換作戦を採っていながら、セーフティカーのタイミングで勝利には届かなかった。無交換作戦は、タイヤは厳しくなるために四輪交換組のペースが優る可能性もある。リスタート後、吉田はトップを守るが、後方からGAINER TANAX GT-Rも追い上げていた。「まだなのか……」吉田にとってチェッカーは遠い。ピットの川合も「SC明けはもう長くて長くて……。ずっと祈っていました」とモニターを見つめた。

 昔の吉田なら、ここでミスを犯していたかもしれない。しかし、「それを気にしてプッシュできないのは良くない」と最後まで集中を切らさず、待ちに待ったチェッカーを受けた。長年スーパーGTに参戦し、やっと掴んだ初勝利。そして川合はまさかのデビュー戦での優勝だ。「夢のようです」と川合は笑顔をみせた。

■多くのライバルたちも祝福した勝利


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