7月18〜19日に行われたスーパーGT第1戦富士は、4台のニッサンGT-RニスモGT500勢にとって厳しいレースとなった。エース格の23号車MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ)は予選Q1敗退、決勝ではGT300との接触もありノーポイント。予選も決勝もニッサン勢最上位は3号車CRAFTSPORTS MOTUL GT-R(平手晃平/千代勝正)の7位となった。関係者の声とともに分析してみると、ニッサン勢の劣勢には複数の要因が浮上してきた。
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富士の予選といえばロニー・クインタレッリ。タイヤのグリップと自らの集中力を最大限に引き出す90秒間の“神業”で、ウエイトハンデをも跳ね除ける数々の驚愕タイムを叩き出してきた。だが、もはやそれは過去の話。
「小さいコーナーが曲がらない」
Q1落ちを喫したロニーの表情は冴えない。前週に鈴鹿で行われたタイヤメーカーテストのセットをベースに走り出した土曜日は、微調整を施してもまったく手応えが得られず、日曜に向けては大幅なセットチェンジを敢行した。
「空力で走るセクター2は良くなったけど、1コーナー(TGRコーナー)、最終セクターなど低速のところで違和感がある」
その違和感の理由を松田次生は「まだベースセットを見つけられていないから」と説明する。
「サスペンションが共通になって、(セットアップは)去年までとは別物だと考えている。いままでと同じだったらあれをこうすればこうなって……というのが分かるけど、それがない状態」だというのだ。
1周のタイムだけでなく最高速でも劣勢なGT-Rは、空力やエンジン面でも苦境にあると想像できる。
「(他メーカーとの)直線スピードの差はエンジンだけじゃなく、L/Dのバランスもあります。我々はベースが“無骨な”形状のクルマですから、ここ数年でスポーツカー然としてきた他社さんのベース車両と比べて、多少差があることは認めます」とニッサンの松村基宏総監督は説明する。
つまり開発領域以外(デザインライン上)の形状、たとえばボンネット前縁部が流線形状となっているGRスープラと、「ハコ形」に近いGT-Rとでは、そもそも空力性能に差がある……というわけだ。
なおGRスープラ勢に比べGT-Rのレーキ(車体の前傾)が控えめである点については「(レーキをつけると)ドラッグが増えるから」と次生。
昨年まではサスペンションのジオメトリー設定で空力やエンジン性能をカバーできていた部分もあったかもしれない。だが、共通サスペンションの採用でジオメトリーの自由度が下がる今季は、そういったアプローチが許されない。これも苦戦の一因かもしれない。
加えて、MOTUL AUTECH GT-RとCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rが履くミシュランタイヤにおいては、新型コロナウイルスの影響も大きかった。